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宗教の自然史

しゅうきょうのしぜんし

デイヴィッド・ヒューム·近代

ヒュームが多神教の哲学的分析を行った宗教哲学の古典

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哲学

この著作について

デイヴィッド・ヒューム『四つの論文』の一篇として発表した、宗教を信仰の内側からではなく人類学的・心理学的に扱う先駆的試み。

【内容】

本書は、宗教の「真理性」ではなく「起源」を問う姿勢から始まる。ヒュームの見立てでは、人間はまず多神教を自然発生的に生み出す傾向を持つ。嵐、疫病、豊作、戦勝など不安定な自然現象を前にした人々は、恐怖と希望から背後に人格的な力を想定し、それを複数の神々として崇めるようになる。一神教はその後、特定の神を他より優位に据える競争的な動きから生まれ、必ずしも「進歩」ではなく、しばしば不寛容や迫害を伴うとされる。続く章では、多神教と一神教の道徳的・心理的な長所と短所が比較され、宗教の不合理への安易な否定ではなく、冷静な自然主義的観察が貫かれる。

【影響と意義】

宗教を神学の内部からではなく、人間の心と社会の自然的帰結として分析しようとする試みとして、十八世紀啓蒙思想の到達点の一つに位置づけられる。以後のコント、デュルケム、フロイト、現代の認知宗教学に至る宗教の自然主義的研究の遠い源流である。

【なぜ今読むか】

スピリチュアリズムや陰謀論、新興宗教の動きを眺めるにつけ、宗教の「起源」を冷静に考える視点が必要になっている。本書は議論の出発点として、今も学問的な節度と鋭さを両立した見本となる。

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