薔
『薔薇の名前』
ばらのなまえ
ウンベルト・エーコ·現代
中世修道院の連続殺人を舞台にした記号学者エーコのベストセラー小説
文学哲学
この著作について
イタリアの記号学者ウンベルト・エーコが1980年に公刊した長編小説。14世紀の北イタリアのベネディクト派修道院を舞台に、オッカムの剃刀で有名な中世末期の論理・哲学・神学・禁書問題を、推理小説の枠組みで描いた世界的ベストセラーである。
【内容】
フランシスコ会士バスカヴィルのウィリアムと、その弟子アドソが、修道院で発生する連続怪死事件の捜査に当たる。鍵は修道院の迷宮的図書館に秘蔵されたアリストテレス『詩学』第二部(喜劇論、実在の失われた書)であり、それを守護しようとする盲目の修道士ホルヘと、解き明かそうとするウィリアムの知的対決が物語を牽引する。ボルヘス『バベルの図書館』への明確なオマージュ、オッカムやウィリアム・オブ・オッカムの哲学、宗教裁判の歴史的背景が、全編に織り込まれる。
【影響と意義】
シン=ショーン・コネリー主演の映画化(1986)で世界的に普及し、記号学・中世哲学・禁書史を大衆文化に接続した稀有な実績を持つ。現代の歴史ミステリ・古典リバイバル文学の先駆。
【なぜ今読むか】
情報の抑圧と解放を中世舞台で描くストーリーとして、デジタル時代の知識の自由を考える寓話としてなお示唆的。