無
『無限論の教室』
むげんろんのきょうしつ
野矢茂樹《のやしげき》·現代
無限のパラドクスを対話形式で読み解く名著
哲学認識論
この著作について
哲学者・野矢茂樹《のやしげき》(のやしげき、1954〜)が1998年に講談社現代新書として刊行した一般向け哲学書である。教師タジマと二人の学生による全12回の哲学講義という体裁をとり、無限と数学基礎論の主題を対話形式で展開する。
【内容】
アキレスと亀のパラドクスから始まり、無限集合論、可算と非可算の区別、対角線論法、選択公理、形式体系と完全性、ゲーデルの不完全性定理に至る道筋を、日常的言葉で丹念にたどる。野矢はカントールやヒルベルトの発見を歴史的に紹介しつつ、無限という概念がもつ哲学的奇妙さを学生の素朴な疑問とともに浮かび上がらせる。最終回ではウィトゲンシュタインの数学観に触れ、無限を「実無限」として実体視する立場と「可能無限」として操作的にのみ認める立場の対立を、もう一度日常感覚に立ち戻って考え直す。野矢の方法論は「考えながら書く」スタイルそのものを哲学的実践として提示しており、結論を急がない読書体験になる。
【影響と意義】
本書は野矢の『論理学』『哲学・航海日誌』に続く一般読者向け哲学書の到達点として評価され、日本語による哲学エッセイの一つの達成点となった。『哲学の謎』『論理学』など野矢の他著作とあわせて、日本語で哲学を学ぶ者にとっての重要な自習リソースを形成。大学の論理学・科学哲学の教養課程でも副読本として用いられる。
【なぜ今読むか】
AIと数学の関係が問われる時代、無限と論理の基礎を体感的に学べる入門として最適である。