三
『三島由紀夫:悲劇への欲動』
みしまゆきお:ひげきへのよくどう
佐藤秀明《さとうひであき》·現代
三島文学の全体像を作品論的に読み解く評伝
文学入門
この著作について
近代日本文学研究者・佐藤秀明《さとうひであき》による、三島由紀夫の生涯と作品世界を結びつけて読み解く評伝。岩波新書。
【内容】
本書はまず、学習院時代の早熟な文芸活動から出発し、戦後の出発作『仮面の告白』、『潮騒』『金閣寺』『鹿鳴館』『豊饒の海』四部作までを時系列に追う。作家の自殺に至る「楯の会」と市ヶ谷事件の経緯、肉体改造・美意識・天皇観の絡まりが、作品そのものの読みと往復するかたちで分析される。通奏低音として「悲劇への欲動」、すなわち人生を一個の悲劇的芸術作品として完成させようとする衝動が取り出される。戦後社会の空洞と「かくあるべし」を失った言葉の危機、能楽・歌舞伎・古典文学への回帰が、どのように創作のエネルギーに転化したかが具体的に描かれる。
【影響と意義】
三島研究の到達点を一般読者に開いた好著として、近年の日本文学論のなかでも評価が高い。ドナルド・キーン、佐伯彰一、野口武彦以来の三島評伝の系譜を現代の視点で刷新した位置を占める。
【なぜ今読むか】
政治・性・宗教・死を正面から扱った三島の問いは、いまなお現代日本を照らし返す鏡である。
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