自
『自由主義と正義の限界』
じゆうしゅぎと せいぎの げんかい
マイケル・サンデル·現代
ロールズのリベラリズムが前提とする「負荷なき自己」を批判し、共同体・伝統・文脈の中に埋め込まれた自己像を対置した政...
哲学
この著作について
若き日のマイケル・サンデルが博士論文をもとに刊行した最初の主著で、ロールズ『正義論』への批判を通じて共同体主義(コミュニタリアニズム)の立場を鮮明にした政治哲学書。
【内容】
サンデルの焦点は、ロールズが「無知のヴェール」で描く自己像、すなわち自分の目的・価値・属性から切り離されたうえで正義原理を選ぶ「負荷なき自己」にある。そのような自己は擁護不可能である、とサンデルは論じる。現実の人間は家族、文化、歴史、信仰のなかに埋め込まれ、そこから完全には離れられない「構成的自己」である。続く章では、所有権、分配の正義、連帯の義務、公共的な徳といった論点について、ロールズのリベラリズムがそれらを扱いきれないことが丁寧に示される。結論として、「正義より善が先行する」局面があり得ると主張される。
【影響と意義】
一九八〇年代以降のリベラリズム対コミュニタリアニズム論争の起点となり、マッキンタイア、テイラー、ウォルツァーらの立場と並ぶ一角を形づくった。サンデルの一般向けベストセラー『これからの「正義」の話をしよう』の理論的土台でもある。
【なぜ今読むか】
アイデンティティ・文化的帰属・共通の善をめぐる議論が、あらゆる国で政治の中心に戻ってきている。自分の属する共同体や物語を、政治哲学のなかでどう扱うかを考える上での、本格的な出発点となる一冊である。