般
『般若心経《はんにゃしんぎょう》』
はんにゃしんぎょう
古代
「色即是空《しきそくぜくう》 空即是色」で知られる大乗仏教を象徴する短経
哲学アジア
この著作について
正式名は『摩訶般若波羅蜜多心経』。約260字という短さで大乗仏教の中心テーマである「空」の思想を凝縮した、東アジアで最も広く読誦されてきた経典である。
【内容】
観自在菩薩(観音)が舎利子(しゃりし、シャーリプトラ)に語りかける形式で、五蘊《ごうん》(色・受・想・行・識)も十二処も十八界も「空」であり、生もなく滅もなく、垢もなく浄もなく、増えも減りもしないと説く。眼耳鼻舌身意も色声香味触法もなく、苦集滅道もなく、智もなく得もない、と従来の仏教教説の鍵概念を次々と否定し、最後に呪文(ガテーガテーパーラガテーパーラサンガテーボーディースヴァーハー)で結ばれる。
【影響と意義】
大般若経《はんにゃきょう》600巻のエッセンスを凝縮した経典として、中国・朝鮮・日本・チベット・ベトナムの仏教徒に広く読み継がれてきた。日本では空海《くうかい》の真言宗、栄西《えいさい》・道元《どうげん》の禅宗、親鸞《しんらん》の浄土真宗を含むほぼ全宗派で読誦され、葬儀や法要で唱えられる最も身近な経典となっている。短さゆえに多くの哲学者・芸術家を惹きつけ、鈴木大拙《すずきだいせつ》の英訳を通じて20世紀の西洋知識人にも広く読まれた。
【なぜ今読むか】
「あるとも言えず、ないとも言えない」という否定の論理を、これほどの密度で説く文書は世界の思想史にも稀である。固定観念を解きほぐす言語の力に直接触れられる古典として、執着・自己同一性・損得を考え直す契機となる。
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