『グーテンベルクの銀河系』
ぐーてんべるくのぎんがけい
マーシャル・マクルーハン·現代
活版印刷が近代西洋の個人主義と視覚的意識を生んだと論じた古典
この著作について
マーシャル・マクルーハン(Marshall McLuhan)が1962年に刊行したメディア論の主著(原題『The Gutenberg Galaxy: The Making of Typographic Man』)。トロント大学の英文学教授であったマクルーハンが、活版印刷の発明が西洋近代を形成した過程を文学・歴史・人類学を縦横に駆使して描いた壮大な試みである。
【内容】
本書はジェイムズ・ジョイス『フィネガンズ・ウェイク』からの引用を章見出しに用いた107の短い断章から構成される。マクルーハンは、グーテンベルクの活版印刷(1450年代)が単なる情報技術革新ではなく、人間の感覚比率そのものを変革したと論じる。口承文化の聴覚的・共同体的・同時的な意識世界は、活版印刷によって視覚的・線型的・個人的な意識世界へと根本から置換された。この感覚比率の変換が、近代的個人主義・民族国家・科学的合理性・印刷資本主義・プロテスタンティズム・標準化された時間を可能にしたという壮大な因果連関が提示される。『リア王』『ハムレット』から『ドン・キホーテ』、アレクサンドル・ポープ、ウィリアム・ブレイクに至るまで、西洋文学の具体的テクストがメディア変容の症候として読み替えられる。
【影響と意義】
本書はウォルター・オング『声の文化と文字の文化』、エリザベス・アイゼンステイン『印刷革命』、ベネディクト・アンダーソン『想像の共同体』の「印刷資本主義」概念、さらに日本では吉見俊哉のメディア論に至る系譜を形成した。後の『メディアの理解』(1964)の理論的基盤を提供する。
【なぜ今読むか】
電子メディア・インターネット・スマートフォンが新しい感覚比率を作り出す現代に、過去の巨大な感覚転換の先例として、本書の分析は未来予測の補助線となる。