『ハムレット』
ウィリアム・シェイクスピア·近代
行動と思索の葛藤を描いたシェイクスピアの四大悲劇の一つ
この著作について
ウィリアム・シェイクスピア四大悲劇の一つで、復讐と思索の狭間で引き裂かれる青年王子の物語を描いた、世界文学の金字塔。
【内容】
デンマーク王子ハムレットは、亡き父王の亡霊から「弟クローディアスに毒殺された」との告白を受け、復讐を誓う。しかし彼は性急に行動せず、狂気を装いながら真相を探り、巡業劇団に父王殺害と類似した劇を演じさせて叔父を動揺させる(劇中劇)。母ガートルード、宰相ポローニアス、恋人オフィーリア、親友ホレイショー、友人ローゼンクランツとギルデンスターンとの関係が絡み合い、偶然の殺人、狂気、死が連鎖して、最終幕で宮廷は血の海と化す。「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ」の独白は、世界文学屈指の名場面として知られる。
【影響と意義】
近代的自我の原型を提示した作品として、ロマン派以降の文学・哲学・精神分析に絶えず参照され続けてきた。ゲーテ、ヘーゲル、S・T・コールリッジ、フロイト、ラカン、ブルームらがそれぞれの仕方で読み解き、映画、現代演劇、詩、漫画にまで果てしない翻案と応用を生んだ。
【なぜ今読むか】
復讐譚の筋書きを越えて、「人間はなぜ行動できないのか」という普遍的問いを鮮烈に差し出す。韻文の美しさと哲学的密度が同時に味わえる、ただ一度は向き合っておきたい古典である。
さらに深く
【内容のあらまし】
幕は冬のエルシノア城の城壁から開く。歩哨たちが亡き王の亡霊を目撃し、王子ハムレットを呼び寄せる。父の急死直後に母ガートルードが叔父クローディアスと再婚した不実への嫌悪に苛まれていたハムレットの前に、亡霊は現れて告げる。自分は弟に毒を耳に注がれて殺された、復讐せよ。ハムレットはこの言葉が悪魔の罠かもしれないと疑い、すぐには動かず狂気を装うことを選ぶ。
第二幕から第三幕にかけて、宮廷では計略が交錯する。宰相ポローニアスは娘オフィーリアを使ってハムレットの狂気の原因を探らせ、王と王妃は学友ローゼンクランツとギルデンスターンを呼び寄せて王子を見張らせる。ハムレットは「生きるべきか死ぬべきか」と独白し、自殺の誘惑と行動の躊躇のあいだで揺れる。旅の劇団が城に到着すると、彼は父王殺害に似た劇を演じさせ、観劇中に動揺するクローディアスの表情から罪を確信する。
決定的瞬間に彼は躊躇する。祈っているクローディアスを背後から突くことができたのに、祈っているうちに殺せば天国へ送ってしまうとためらい、剣を収める。直後、母の寝室で物陰に隠れていた人物を王だと思って刺し殺すが、それは隠れて聞き耳を立てていたポローニアスだった。父を殺された衝撃でオフィーリアは正気を失い、川辺で歌を歌いながら水に落ちて死ぬ。
ハムレットはイングランドへ追放されかけるが、海賊船の襲撃で道中から戻ってくる。墓場でかつての道化ヨリックの頭蓋骨を手に取り、人間の最期を見つめる名場面が訪れる。最終幕では、父と妹を失ったレアティーズがクローディアスと組んで毒入りの剣と毒杯を用意し、和解を装った試合に王子を誘う。試合のなかで毒杯を飲んだ母ガートルードが倒れ、毒剣を奪い合った末にレアティーズもハムレットも致命傷を負い、王子は最後の力で叔父に剣を突き立て毒杯を飲ませる。「あとは沈黙」と言い残してハムレットは死に、ノルウェーの王子フォーティンブラスがデンマークに乗り込んで幕が下りる。
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