人
『人間知性研究』
にんげんちせいけんきゅう
ヒューム·近代
ヒュームが認識論の問題を明快に論じた哲学の古典
認識論哲学
この著作について
若き日の大著『人間本性論』がほとんど売れなかったヒュームが、その核心を平明な文体で書き直して世に送り出した中期の主著。
【内容】
まず「印象」と「観念」という心の素材を区別し、観念連合の三法則(類似・近接・因果)が基礎に据えられる。続いて、因果関係が論理的にも経験的にも必然性を持たず、過去の「恒常的連接」から生まれる心の習慣にすぎないことが論じられる。後半では、自由意志と必然の両立、奇跡を信じることの合理性、経験論的懐疑論の位置づけ、理性と信仰の関係までが順に扱われる。全十二節という薄さで、ヒューム経験論の主要命題がすべて凝縮されている。
【影響と意義】
カントが「独断のまどろみから私を呼び覚ました」と述べたことで広く知られ、『純粋理性批判』執筆の直接的な刺激となった。現代科学哲学における帰納の問題、因果論争、ベイズ認識論、そして奇跡をめぐる宗教認識論の議論も、みなこの書の問題設定を出発点に持つ。
【なぜ今読むか】
「なぜ科学は成り立つのか」「ある証言をどこまで信じてよいのか」という問いは、フェイクニュースや生成AIの時代にかえって日常的な切実さを帯びている。懐疑の作法を身につけ、情報を吟味する筋力を鍛えるうえで、最もコンパクトに使える古典である。
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