『暴力批判論』
ぼうりょくひはんろん
ヴァルター・ベンヤミン·現代
法維持暴力と法措定暴力の区別から神的暴力を示唆したベンヤミン論文
この著作について
ヴァルター・ベンヤミン(Walter Benjamin)が1921年に発表した政治哲学論文(原題『Zur Kritik der Gewalt』)。分量は小さいが、二十世紀の政治哲学においてもっとも繰り返し論じられてきたテクストの一つで、法と暴力の関係を根本から問い直す金字塔的小論である。
【内容】
ベンヤミンは近代国家の暴力を二種類に区別する。既存の法秩序を維持する「法維持暴力(rechtserhaltende Gewalt)」と、新しい法秩序を打ち立てる「法措定暴力(rechtsetzende Gewalt)」である。警察・刑罰・軍事裁判は前者に、革命・新憲法の制定は後者に属する。両者は相互に循環的に支え合っており、近代法は常にその起源に措定的暴力を隠している。本論文の最終段階で導入される「神的暴力(göttliche Gewalt)」は、法そのものの圏域を脱構築する第三の暴力として予告的に呼び出される。それは血を流さず、既存の法を断ち切り、責任も罪責感も刻まない、純粋に革命的な断絶として描かれる。プロレタリアのゼネラル・ストライキと神話的暴力の対比、アナキスト的伝統への接近、カール・シュミットとの緊張関係が短い頁数のうちに凝縮される。
【影響と意義】
デリダ『法の力』、アガンベン『ホモ・サケル』『例外状態』、ジジェクの革命論、ジュディス・バトラー『非暴力の力』に至るまで、本論は現代政治哲学の暴力論の出発点として機能してきた。シュミット『政治的なものの概念』と並んで、二十世紀政治思想における主権と暴力の論争の二大中心軸をなす。
【なぜ今読むか】
抗議・ストライキ・例外状態・テロの語が同じ政治的地平で交錯する現代に、暴力の諸形態を哲学的に識別する古典として、手短で決定的な読書となる。
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