法
『法の力』
ほうのちから
ジャック・デリダ·現代
法と正義の関係を脱構築的に論じたデリダの著作
哲学
この著作について
ジャック・デリダがアメリカでの学術集会で行った講演を中核に、法・正義・暴力の関係を脱構築の視角から論じた中期の重要な著作。
【内容】
本書の中心命題は、「法は脱構築可能だが、正義は脱構築不可能である」という逆説である。法は必ず特定の歴史と暴力のもとで基礎づけられ、変更・批判・脱構築にさらされる。しかし、法には還元されえない「正義」への呼びかけは、そのつど到来するものとして、どのような制度化にも回収されない。続いてヴァルター・ベンヤミンの『暴力批判論』が精読され、「神話的暴力」と「神的暴力」の区別が孕む危うさが慎重に摘出される。アパルトヘイト、死刑、国際法といった具体的論点にも議論が及ぶ。
【影響と意義】
本書は法哲学、批判法学、政治哲学に決定的な影響を与え、脱構築が倫理的・政治的プロジェクトであることを鮮明にした。歓待(オスピタリテ)、人権、他者への責任をめぐる後期デリダの主題群の出発点でもあり、アガンベン、ムフ、ラクラウら同時代思想家の議論とも深く交差している。
【なぜ今読むか】
抽象的な概念操作に見える脱構築が、アパルトヘイトや死刑、国際刑事裁判といった具体的問題と結びつく瞬間が随所にある。「正義とは何か」を一気に深く考えさせられる、法的思考と哲学的思考の交差点に立つ一冊である。
著者
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