政
『政治的なものの概念』
せいじてきなもののがいねん
カール・シュミット·現代
「政治の本質は友と敵の区別にある」と論じた20世紀政治思想の論争的著作
政治哲学
この著作について
ワイマール末期のドイツでカール・シュミットが発表し、数度の版で書き直された短い政治理論書で、二十世紀政治思想の最も論争的な書物の一つ。
【内容】
シュミットは冒頭で、美を論じるには「美と醜」、道徳を論じるには「善と悪」、経済を論じるには「有益と有害」の区別が必要だと論じ、政治固有の区別として「友と敵」を提示する。敵は道徳的悪人でも経済的競争相手でもなく、必要とあらば戦争に至るほど集団的自立を脅かすと判断された他者である。政治とはこの区別が現れる強度そのものであり、教会・経済・道徳のどの領域からでも政治化しうる。議会制リベラリズムは「政治的なもの」を討議と妥協によって中立化しようとするが、決定的瞬間には必ず回復されると彼は主張する。版を追って、パルチザン論、多極化する国際秩序、技術時代の中立化への批判など複雑な論点が付加される。
【影響と意義】
著者のナチス加担という歴史的負荷にもかかわらず、本書は左右両陣営の政治思想家にとって避けられない参照点となってきた。アガンベン、ムフ、シャンタル、アサドら現代思想家の仕事も、本書との対決なしには成立しない。
【なぜ今読むか】
テロと対テロ、大国間競争、移民や少数派をめぐる敵味方の言説が急速に広まる現代、「政治的なものとは何か」を根底から考え直す必要は大きい。批判的に読むことが前提となる、しかし避けて通れない重要書である。