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太

『太陽の都』

たいようのみやこ

カンパネッラ·近代

自然哲学と共産主義的ユートピアを描いた17世紀の理想国家論

哲学政治

この著作について

イタリアのドミニコ会士トンマーゾ・カンパネッラが獄中の1602年にイタリア語で書き、1623年にラテン語で公刊したユートピア文学の古典。モアの『ユートピア』、ベーコンの『ニュー・アトランティス』と並ぶ近世三大ユートピアの一つ。

【内容】

物語は、ジェノヴァ人の航海士が僧侶に語る形式で進む。セイロン島近くの『太陽の都』は同心円状に広がる七つの城壁を持ち、中央にある神殿の壁には全学問の知識が絵として描かれている。最高司祭「太陽」のもとに「力」「知」「愛」の三長官が国を統治し、私有財産と家族制度は廃されて共同体的に運営される。占星術と自然魔術を重んじ、太陽の運行に従って生活が組織される。労働は4時間に抑えられ、残りは学問と修養に充てられる。

【影響と意義】

17世紀ヨーロッパのユートピア思想を代表する作品で、後の空想的社会主義、共産主義的理想郷の系譜に直接の影響を与えた。自然哲学と共産主義的共同体像を結合させた独創性が評価される。

【なぜ今読むか】

自然に従う生活、短い労働時間、平等な共同体。現代のサステナブル・ライフ、コミューン運動、ベーシックインカム論にも通じる問題意識を、400年前の閉ざされた牢獄から投げかけた作品として読み直せる。

どの訳で読むか

いちばん新しい訳は、2025年に水声社から出た澤井訳で、書名は「太陽の都市」となっている。岩波文庫に近藤訳があるが、版元のサイトでは品切れと表示されている(2026年10月時点)。訳によって書名が違うので、探すときは訳者名も合わせて検索するとよい。

  • 澤井繁男訳水声社・イタリアルネサンス文学・哲学コレクション6、2025年

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    書名は「太陽の都市」。A5判上製160頁で、訳注、カンパネッラ略年譜、訳者解説を収める。同コレクション全6巻の完結巻にあたる。訳者はイタリアルネサンス文学・文化論が専門で、「評伝 カンパネッラ」(人文書院、2015年)などの著書がある。

  • 近藤恒一訳岩波書店・岩波文庫、1992年

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    岩波文庫の青679-1で、文庫186頁。版元の紹介は、獄中で書かれたユートピア論で、人間の営みのすべてにわたる革新の素描が対話の形で展開される、としている。紙の本は版元のサイトで品切れと表示されている(2026年10月時点)。

ほかに、坂本鉄男訳「太陽の都・詩篇」(現代思潮社の古典文庫、1984年)がある。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書に章立てはなく、聖ヨハネ騎士団の騎士が問い、ジェノヴァの船乗りが答える対話として進む。船乗りは、世界を巡った末にタプロバナ島で上陸を強いられ、赤道直下の平原で武装した男女の一団に出会い、都へ連れて行かれたと語り始める。

都は七つの惑星の名がついた七つの環に分かれ、奥の環ほど攻めにくく、都を取るには七度攻め落とさねばならない。神殿の祭壇には、天と地を描いた二つの球儀しかない。国を治める祭司君主の「太陽」を、力、知、愛を表す名の三人の長官が支える。知の長官は環の壁に学問を描かせた。第一の環の内側にはユークリッドやアルキメデスが記したより多くの数学の図形、外側に世界地図がある。第六の環の外側には法や学問の創始者が並び、モーセやオシリスに交じってイエスと十二使徒もいる。

騎士はたびたび異を唱える。財産が共有なら、アリストテレスがプラトンに反論したように、人が働くのを待つばかりで誰も働かなくなるのではないか。船乗りは、財産を持たない都の人々の祖国愛はローマ人以上だと答える。役職には気前のよさ、貞潔、真実といった徳の名がつく。太陽になれるのは、あらゆる技術と学問の根拠に通じ、形而上学と神学を修めた者で、35歳を過ぎていることも条件になる。学問に打ち込む者に国は治められないと騎士が言うと、船乗りは都の人々の言い分を伝える。多くを知る者は残酷にも暴君にもならない。文法やアリストテレスの論理学を覚えただけの者は、物でなく本を見ているので、神が世界をどう治めるかを知らない。都では労働は一日四時間ほどで、残りは学びと遊びに充てる。足の不自由な者は目で見張りを務め、目の見えない者は羊毛をすく。老衰のほかには、どんな欠陥も人を無為にしない。

話は戦争から裁判へと進む。都は戦いの前に祭司を送り、奪ったものの返還か暴政をやめることを求める。法はごく少なく、すべて神殿の扉の銅板に書かれている。判事は徳の定義を記した柱のもとに座り、汝はこの定義に背いたと告げる。

宗教の話では、民のために身を捧げる志願者が、綱で吊った台に乗せられてドームの上へ引き上げられ、祈りと断食の二、三十日を経て神の怒りが和らぐと、下へ戻っていつまでも敬われる。天文学ではプトレマイオスを称えコペルニクスに感嘆しつつ、どちらも石や豆で数えるだけで、数える物そのもので数えてはいないと言う。世界は一匹の大きな動物で、人はその中に、体内の虫のように住むとされる。やがて船乗りは、船に乗り遅れると気をもみ、この百年には過去の四千年より多くの歴史があり、磁石と印刷と火縄銃が生まれたという話を急ぎ足で伝える。

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