快
『快感原則の彼岸』
かいかんげんそくのひがん
ジークムント・フロイト·近代
死の欲動概念を導入したフロイト後期思想の転回点
心理哲学
この著作について
ジークムント・フロイトが1920年に公刊した、精神分析理論の根本的再編を試みた論考。それまで「人間は快を求め不快を避ける」という快感原則で説明してきた心の働きに加え、それを超えて反復・破壊・死へと向かう「死の欲動(タナトス)」を新たに導入した、フロイト後期思想の決定的転回点である。
【内容】
第一次世界大戦の戦闘神経症患者の強迫的反復、子供の「いないいないばあ」遊びに見られる不快な場面の反復、そして夢や転移における苦痛な経験の繰り返しを、快感原則の枠組みでは説明できない現象として取り上げる。生命は物質から発生したがゆえに物質状態への復帰を目指す衝動を原初的に宿しており、「生の欲動(エロス)」と「死の欲動」が生命のあらゆる現象の背景で競い合うと仮説される。
【影響と意義】
ラカンの「享楽」論、メラニー・クラインの対象関係論、マルクーゼの『エロス的文明』、デリダの『死の贈与』『郵便葉書』など、20世紀後半の思想に深甚な影響を与え続けた。『精神分析入門』と並ぶ後期フロイトの最重要テクスト。
【なぜ今読むか】
強迫的行動・依存症・自己破壊的SNS行動など、現代社会の「なぜ人は不快な状態に固執するのか」を考える原点。
著者
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