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エロスと文明

えろすとぶんめい

マルクーゼ·現代

フロイトとマルクスの融合を試みたマルクーゼの野心作

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社会思想哲学

この著作について

ヘルベルト・マルクーゼが亡命先のアメリカで著した野心的な文明論で、マルクスフロイトを縫い合わせ、抑圧なき文明の可能性を探った戦後思想の古典。

【内容】

本書はまずフロイトの文明の不満を丁寧に読み直し、快楽原理と現実原理の対立、欲動の抑圧と昇華、文明と本能の緊張関係を再構成する。そのうえでマルクーゼは、フロイトが不可避として扱った抑圧のうち、大半は特定の支配関係(資本主義的労働分業)が課す「余剰抑圧」であると論じる。技術と生産力の発達は労働時間を根本から短縮しうるのに、支配構造がそれを抑え込んでいる。エロス(生の欲動)の解放、労働と遊びの境界の消失、感性の復権こそが、非抑圧的文明の可能性を開く方向だとされる。末尾ではオルフェウスとナルキッソスの神話が「新しい感性」のイメージとして召喚される。

【影響と意義】

マルクス疎外論とフロイト抑圧論を融合する試みとして、一九六〇年代のカウンターカルチャー、性解放、新左翼運動に強い思想的基盤を提供した。現代のポスト労働論、ベーシックインカム、ワークライフバランスの議論にも、本書の構想は遠く響いている。

【なぜ今読むか】

AIと自動化の進展が「必要労働の減少」を現実味ある論点にしつつあるいま、本書が描いた「労働と遊びの区別が消える社会」の構想は、単なるユートピアではなく具体的な政策論と接続しうる。

著者

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