共犯とされる二人が、別々の部屋で取り調べを受けています。二人とも黙秘すれば軽い処分で済む。自分だけが話せば自分は罪に問われず、黙っていた相手が重い処分を受ける。二人とも話せば、中くらいの処分になります。
相手が何を選んでも、自分にとっては話すほうが得です。 だから二人とも話し、二人とも黙るより悪い結果になります。
まずは選んでみてください。
まず、選んでみる
共犯とされる2人が、別々の部屋で取り調べを受けています。2人とも黙秘すれば、どちらも軽い処分で済みます。自分だけが話せば、自分は罪に問われず、相手が重い処分を受けます。2人とも話せば、どちらも中くらいの処分になります。相手とは連絡が取れません。
話しますか。
正解はありません。選ぶと、その答えがどの前提に乗っているかが出ます。
この問いを作った人
1950年、アメリカのランド研究所でメリル・フラッドとメルヴィン・ドレシャーが作った状況に、アルバート・タッカーが囚人の話を付けました。
冷戦のただ中です。 核軍縮の場面がまさにこの形をしていました。互いに軍備を減らせば双方が得をするのに、相手が減らすかどうか分からないので、どちらも減らせない。理論が現実から出てきた例です。
この問いが哲学に効くのは、個人の合理性と全体の合理性が食い違うことを、逃げ場なく示した点にあります。誰も間違えていないのに、全員が悪い結果に着く。
4つの答えは、それぞれ別の哲学に立っている
自分の得で決める。相手が何を選んでも、自分にとっては話すほうが得だ。これが理屈としては正しいところがこの問題の核心です。ホッブズは、決まりの無い状態では誰もがこう考えるしかなく、結果として万人の万人に対する闘争になると論じました。
相手の出方を読む。相手も同じ計算をするなら、黙れば自分だけが重い処分を受ける。読んだ結果が同じ結論に着くので、読めば読むほど抜け出せません。
取り決めを守る。裏切らないという取り決めに乗った以上、そこは守る。損得の計算とは別のところに約束を置く立場です。ロックは、契約を守ることを社会の土台に置きました。
先に信じる。信じられない相手となら、そもそも組まない。ルソーに近い立場で、問題を選択の場面でなく、その前の関係のほうで解こうとしています。
抜け道は、外側にしかありません
この問題が示したのは、中にいるかぎり抜けられないということです。
二人とも賢く、二人とも正しく計算し、それでも悪い結果になる。もっとよく考えれば解決する、という種類の問題ではありません。
だから解決策はすべて、状況の外側から来ます。約束を強制する仕組みを置く。関係を続くものにする。相手を信じる文化を育てる。ホッブズが国家を必要だと論じたのは、まさにこの理屈です。 中で解けないから、上に置く。
いま、この問いが出てくる場所
気候変動の交渉は、この形そのものです。各国が排出を減らせば全体が得をしますが、自国だけが減らすと損をする。取り決めを守らせる上位の存在がいないので、囚人のジレンマを多人数に広げた形になっています。
身近なところでは、値下げ競争、残業の張り合い、SNS での攻撃の応酬。どれも、一人ひとりが合理的に動いた結果として全員が消耗します。
自分が愚かだから抜けられないのではない。そう分かることが、この問いのいちばんの効き目かもしれません。