
サン=テグジュペリ
Antoine de Saint-Exupéry
1900年 — 1944年
『星の王子さま』の著者、飛行士にして詩人
この人物について
「大切なものは目に見えない」と語ったフランスの作家・飛行家。行動する人間主義を自ら体現した永遠の詩人である。
【代表的な著書・業績】
1943年の童話『星の王子さま』は世界300以上の言語に翻訳され、現代文学の古典となった。夜間郵便飛行を舞台にした『夜間飛行』、サハラ砂漠不時着の経験を踏まえた『人間の土地』、未完の遺著『城砦』など、飛行士としての体験に根ざした作品群を残している。1944年、偵察飛行中に地中海上空で行方不明となり、2000年に機体の残骸が発見された。
【思想・考え方】
人間同士の絆(リアン)こそが人生の意味であると考え、物質主義や官僚主義に対して人間的な温かさと冒険の精神を対置した。責任と義務を引き受けることによって真の自由が実現されると説き、技術が人間を取り巻いてもなお人と人を結ぶ絆こそが文明の核であるとした。子どもの純粋な眼差しが大人に見失われた真実を見抜く力を持つと信じた。
【特徴的な点】
職業パイロットとして南米航空路線の開拓や郵便飛行に従事した実体験が全作品の土台にあり、文学と技術、哲学と行動を結びつけた希有な作家であった。
【現代との接点】
人間関係の大切さ、物質主義への批判、想像力の価値といった普遍的テーマで、世代を超えて読み継がれている。
さらに深く
【生涯と作品】
アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900〜1944)は、フランスのリヨンに古い貴族の家系の長男として生まれた。4歳で父を失い、母の庇護のもと城館を転々とする夢想的な少年期を過ごした。海軍兵学校の受験に失敗した後、1921年に兵役で航空連隊に入り、パイロットの資格を得た。1926年にアエロポスタル社に入社し、トゥールーズ=カサブランカ=ダカール間の郵便飛行、さらに南米アルゼンチンの航路開設に従事した。サハラ砂漠上空での不時着、アンデス越えでの遭難救助、1935年のリビア砂漠での墜落と奇跡的生還は、いずれも作品の血肉となった。第二次大戦勃発後は偵察部隊の一員として出撃、一時アメリカに亡命して『星の王子さま』を執筆、1944年7月31日、コルシカ島ボルゴ基地を出撃した偵察飛行から帰還せず、地中海に消えた。44歳であった。
【作品の思想的核心】
『夜間飛行』『人間の土地』『城砦』を貫くのは、行為を通じて人間が自己を形成するという行動主義的人間観である。機体と気象と大地に身を預けるパイロットの経験は、安全で抽象的な思弁を拒み、責任と連帯こそが人を人たらしめるという直観を鍛え上げた。『星の王子さま』の「大切なものは目に見えない」「君のバラが大切なのは、君が時間を費やしたからだ」という一節は、関係を築く時間そのものが存在の重みを形作るという倫理を、寓話の形で差し出す。『戦う操縦士』では、敗色濃いフランス空軍での出撃のなかに、文明と人間性を擁護する行為の根拠を見出した。物質主義と官僚主義への痛烈な批判と、行動する人間主義が、その文学を貫いている。
【後世への影響】
『星の王子さま』は500以上の言語・方言に翻訳され、世界累計2億部を超えるフランス文学最大のロングセラーとなった。村上春樹、レヴィナスら後続の読者が繰り返し言及し、エコロジー、ケアの倫理、教育学、企業経営の文脈でも参照されている。20ユーロ紙幣の旧デザインや各地のサン=テグジュペリ空港など、その像は公共空間にも深く根を下ろしている。
【さらに学ぶために】
『星の王子さま』は何歳で読んでも新しい発見がある。関係に時間を費やすことの意味を、静かに思い出させてくれる一冊である。
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