自分に向いた仕事がわからない
じぶんに むいた しごとが わからない
何が自分に合うのか分からず、転職や進路に迷う
この悩みについて
何年働いても「本当にこれが自分の仕事なのか」という疑問が消えない。転職を考えても、次こそ正解という確信が持てない。周りは順調に見えるのに、自分だけずっと探し続けている気がする。そんな感覚を抱えていませんか。
「向いた仕事」を天から与えられた答えのように考えると、いつまでも見つかりません。哲学者たちは、仕事を「発見するもの」ではなく「選び取り、作り上げるもの」として捉えてきました。
【哲学はこの悩みをどう見るか】
アリストテレスは『ニコマコス倫理学』で、各人には固有の「機能(エルゴン)」があり、その機能をよく発揮することが幸福(エウダイモニア)だと論じました。向いた仕事とは、自分の強みや性分をよく発揮できる場のことであり、探すより日々の行為のなかで見出すものだとしています。
キェルケゴールは『あれか、これか』で、人間は選択によって自己を形成すると説きました。どちらが正解かは選ぶ前には分からない。選んだあとで、その選択を引き受けることで初めて自分の道になる。正解を待つことで実は選択から逃げている、というのが実存思想の核です。
ニーチェは『ツァラトゥストラ』で「汝自身になれ」と呼びかけました。既製の職業のなかから「自分に合うもの」を探すのではなく、自分が価値を置くものを中心に仕事のかたちを作っていく。創造的な自己理解が鍵になります。
【ヒント】
「向いている」を才能や適性だけの問題にすると、永遠に答えは出ません。どこに時間を使っても苦にならないか、何に価値を感じるか。その問いから入ると、候補が絞られていきます。
さらに深く
【実践に使えるアプローチ】
■ アリストテレスの「機能」で棚卸しする
自分が自然にできて、かつやっていて気にならないことは何か。人より上手くやれることは何か。アリストテレスが言う「機能の発揮」は、派手な才能より、日常の中で自然と立ち現れる習慣的な強みに宿ります。過去の職場や学生時代にも立ち返り、褒められた瞬間、時間を忘れた瞬間、頼られた場面を書き出してみる。そこに自分の機能の輪郭が見えてきます。他人が苦労することをあなたは苦なくできることが、意外と多いはずです。
■ キェルケゴールの「選択」で決めきる
完全な情報がそろう日は来ません。今ある情報で一度選び、選んだあとにその選択を正解に育てていく。実存思想の核は「選んでから始まる」ことの引き受けです。情報収集を言い訳に立ち止まっているなら、期限を切って一度選んでみることが前進につながります。選んだ結果が合わなかったら修正すればいいと、最初から決めておくだけで一歩を踏み出しやすくなります。
■ 実際にやっている人に話を聞く
ニーチェが「汝自身になれ」と呼びかけたように、自分に合う仕事は既製品のカタログから選ぶものではなく、自分で作っていくものです。頭で考え続けるより、実際にその仕事をしている人に一人会って話を聞くほうが、判断材料として濃密です。SNSで声をかけてもいい、業界のイベントに出てもいい。リアルな現場の話を聞くと、空想で肥大化した憧れも不安も、実像の大きさに戻ります。
【さらに学ぶために】
アリストテレス『ニコマコス倫理学』は、機能と徳と幸福の関係を論じた古典で、キャリアを「固有の働き」という視点から考えるヒントになります。キェルケゴール『あれか、これか』は、選択と自己形成をめぐる実存思想の出発点であり、決めきれないときの思想的支えになります。
関連する哲学者
アリストテレス
万学の祖、徳と中庸の哲学者
各人固有の「機能(エルゴン)」を発揮することが幸福であると説き、向いた仕事を固有の働きとして捉える視点を示した
キルケゴール
実存主義の先駆者、主体的真理の哲学者
『あれか、これか』で人間は選択によって自己を形成すると説き、正解を待つことが選択から逃げていると指摘した
ニーチェ
「神は死んだ」と宣言した超人の哲学者
「汝自身になれ」と呼びかけ、既製の答えを探さず自分が価値を置くものから仕事を作る姿勢を示した


