『ツァラトゥストラはこう語った』
つぁらとぅすとらは こうかたった
ニーチェ·近代
「超人」と「永劫回帰」を説いたニーチェの代表作
この著作について
ニーチェが1883年から1885年にかけて四部に分けて公刊した、ペルシアの預言者ツァラトゥストラの口を借りて自らの哲学を物語的に展開した代表作。
【内容】
10年間山にこもった賢者ツァラトゥストラが人里に下り、「神は死んだ」と宣言し、人間を超える存在「超人(ユーバーメンシュ)」の到来を告げるところから物語が始まる。精神が駱駝からライオン、そして子どもへ変わっていく「三段の変化」の比喩、すべての出来事が無限に繰り返されるという「永劫回帰」の思想、それでもなお人生を肯定する「運命愛」といった中心概念が、詩的な独白と挿話として示されていく。哲学書でありながら文学作品でもある独特の形式をとる。
【影響と意義】
合理と進歩の19世紀末に、理性では届かない生の肯定をうたった点で衝撃的だった。20世紀の実存主義やポストモダン思想に決定的な影響を与え、リヒャルト・シュトラウスの交響詩、映画『2001年宇宙の旅』の冒頭曲としても広く知られる。
【なぜ今読むか】
「三段の変化」の比喩は、義務に従う段階から自由を勝ち取り、最後に遊びの境地に至るまでの精神の成長を鮮やかに描く。疲れたときに開くと、不思議と背筋が伸びる一冊。
さらに深く
【内容のあらまし】
30歳で山にこもったツァラトゥストラは、10年の孤独のあと太陽に語りかけ、自分の知恵を人々に分け与えるため山を下りる。最初に立ち寄った町の市場で、彼は綱渡りの興行を見にきた群衆に向かって叫ぶ。「神は死んだ」。そして、人間は獣と超人のあいだに張られた一本の綱だと告げる。だが群衆は笑い、綱渡りの男が落ちて死ぬのを見届けてツァラトゥストラは町を去る。教えるべき相手は群衆ではなく、選ばれた弟子たちだと悟る。
第一部では弟子たちに向けてさまざまな比喩で語る。なかでも「三段の変化」は鮮やかだ。精神はまず駱駝になって重荷を背負い、次に獅子となって「我は欲する」と叫び自由を勝ち取り、最後に子どもとなって無心に新しい価値を創造する。義務・反抗・遊びという三段階の魂の成長が、わずか数ページに刻まれる。
第二部・第三部で、ツァラトゥストラはより深い思想にたどり着く。すべての出来事が永遠に繰り返されるという「永劫回帰」である。最初これは耐え難い思想として彼を打ちのめす。最も卑小な人間の人生さえ無限に戻ってくるなら、世界は救われないように見えるからだ。しかし彼は病から立ち直り、それでもなおこの繰り返しを「もう一度」と望めるほど人生を肯定することこそが超人の生き方だと宣言する。これが「運命愛」である。
第四部では、王・魔法使い・引退した教皇など「より高き人間たち」が彼の洞穴を訪れる。彼らは時代に絶望した賢人たちだが、ツァラトゥストラは彼らに憐れみを感じてはならないと自らを戒める。最後、子どもたちの笑い声と獅子の徴を受け、彼はまた山を下りる。「わが朝は来た」と告げて物語は閉じる。説教でも論文でもない、人類への詩として読み通される一冊だ。