在
『在宅ひとり死のススメ』
ざいたくひとりしのすすめ
上野千鶴子《うえのちづこ》·現代
自宅独居死を肯定する上野千鶴子《うえのちづこ》の老後論集大成
社会学
この著作について
社会学者・上野千鶴子(うえのちづこ、1948〜)が2021年に文藝春秋(文春新書)から刊行したベストセラー。『おひとりさまの老後』『おひとりさまの最期』に続く独居高齢者論の集大成にして、コロナ禍という新しい状況のなかで「自宅で一人で死ぬ」という選択肢を社会的に肯定する書である。
【内容】本書は最新の在宅医療・在宅介護の制度と現場を踏まえ、最期を迎える場所として病院・施設・自宅の三選択を比較しながら、自宅独居死が決して「孤独死」「悲惨」ではないと論じる。訪問診療・訪問看護・小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能の活用、終末期の意思決定支援、相続と死後の手続き、孤独と孤立の違い、地域包括ケアシステムとの関係などが具体的に扱われる。看取り経験を持つ医療者・介護者の証言が織り込まれ、「迷惑をかけずに死ぬ」ではなく「上手にケアを受けて死ぬ」という発想の転換が説かれる。
【影響と意義】本書は上野の『家父長制と資本制』『老いる準備』『おひとりさまの最期』と連なる一連の著作の中核をなし、日本のフェミニズム・介護福祉学・社会政策論・高齢社会論に広範な影響を与えた。介護保険制度、単身高齢者の住宅政策、看取り支援サービスの議論にも広く参照され、日本社会の老後観を更新する役割を果たしている。
【なぜ今読むか】生涯未婚率が上昇し、誰もが人生の一時期を単身で過ごす時代に、本書は「ひとりで死ぬ」を恐怖から準備可能な選択へと転換する具体的指針となる。