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民約訳解

みんやく やくかい

中江兆民《なかえちょうみん》·近代

中江兆民のルソー翻訳・注釈

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哲学

この著作について

「東洋のルソー」と呼ばれた中江兆民《なかえちょうみん》が、ルソー社会契約論の前半部を漢訳し、逐条の注釈を加えた自由民権運動期の思想的記念碑。

【内容】

本文は漢文訓読体で記され、ルソーの自然状態論、一般意志、主権在民、市民的自由といった核心的な概念が、儒学の語彙と響き合う言葉に置き換えられる。たとえば「主権」は「君主の権」ではなく「人民そのものが持つ公共の意志」として語り直され、注釈には孟子荀子ロックホッブズとの対比が織り込まれる。兆民はただ訳すのではなく、東洋の政治思想の伝統の中にルソーを接ぎ木することで、この書を自由民権運動の理論的武器に仕立て上げた。

【影響と意義】

西洋の人民主権思想を日本語圏で本格的に受容する出発点となり、植木枝盛《うえきえもり》や民権派の政治論に大きな影響を与えた。兆民自身は後に『三酔人経綸問答(さんすいじんけいりんもんどう)』で議論を発展させたが、本書は儒学的素養に立脚しながら近代政治思想と向き合った、日本近代思想史上の貴重な翻訳=注釈書である。

【なぜ今読むか】

外来の概念を自国の伝統のなかで読み替える営みは、グローバルな価値と地域的な文化が交錯する現代にこそ学ぶ価値がある。民主主義を日本語で考え直すための、もう一つの出発点として味わえる一冊である。

著者

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