門
『門』
もん
夏目漱石·近代
前期三部作の終曲、罪を抱えた夫婦の静かな物語
日本思想文学
この著作について
夏目漱石が1910年(明治43年)3月から6月にかけて朝日新聞に連載した長編小説。『三四郎』『それから』に続く前期三部作の三作目にあたる。
【内容】
小役人の宗助とその妻お米は、東京の崖下の借家で世間から身を隠すように静かに暮らしている。二人は元々親友同士であった宗助と安井のうち、宗助がお米を奪う形で結ばれた過去を持ち、その罪の意識ゆえに親類縁者から距離を置いて生きている。秋に弟の小六を引き取った頃から、安井がたまたま家主を訪ねてきていることが判明し、宗助は動揺して鎌倉円覚寺の門前に十日間の参禅に出る。だが「門」は容易には開かず、宗助は何も得られないまま下山する。物語は事件らしい事件のないまま終わるが、その静けさが内面の重さを際立たせる。
【影響と意義】
本作は漱石が初めて宗教的救済の問題に正面から触れた作品とされ、後の『行人』『こころ』『道草』へと続く後期作品群の問題意識を準備した。タイトル「門」は新約聖書「狭き門より入れ」を踏まえつつ、容易には越えられない自我の壁の象徴として読まれてきた。
【なぜ今読むか】
罪を抱えながら日常を生きるとはどういうことか、声高な悔悟ではなく沈黙のうちに描く小説の力を味わうための一冊である。
著者
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