愚
『愚者のために』
ぐしゃのために
ガウニロ·中世
アンセルムスの存在論的証明に「失われた島」で反論した中世の論駁書。
哲学
この著作について
11世紀フランスの修道士マルムティエのガウニロが、アンセルムスの『プロスロギオン』に示された存在論的神存在証明に対して書いた短い論駁書である。ラテン語原題は Liber pro insipiente adversus Anselmi in Proslogio ratiocinationem。題名は「愚者は心の中に神は無いと言う」と語る詩篇14編の「愚者」を引き、その立場から反論を試みる体裁を取る。【内容】ガウニロは「失われた島」の比喩を用い、想像できる最も完全な島を考えても、それが現実に存在することにはならないと指摘した。同じ論法で「それより大なるものを考ええない存在」から神の現実存在を導くことはできないと主張し、思考のうちの存在と現実の存在を区別する立場を打ち出した。【影響と意義】アンセルムスはこれに対し『反駁書』で応答し、両者は対の文書として中世写本に伝承された。神学史における存在論的証明をめぐる最初期の本格的論争として、後のトマス・アクィナスの批判、デカルトの再構成、カントによる根本的反駁へと続く長大な議論の出発点となった。【なぜ今読むか】信仰と理性、概念と実在の関係を考えるとき、ガウニロの素朴な反論は今も鋭い切れ味を持つ。短い論駁が長大な思想史を動かす実例として読める一冊である。
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