倫
『倫理学原理』
りんりがくげんり
G・E・ムーア·現代
20世紀分析倫理学の出発点。「自然主義的誤謬」を提唱した古典
倫理哲学
この著作について
ケンブリッジ大学の哲学者ジョージ・エドワード・ムーアが1903年に公刊した、20世紀分析倫理学の出発点に立つ古典(原題『Principia Ethica』)。
【内容】
ムーアは「善(good)」を倫理学の中心問題とし、それが「快」「進化的に高度なもの」「自然な欲求の対象」など他のいかなる自然的性質にも還元できない単純で分析不可能な性質だと主張する。「善」を「快」など別の語で定義しようとする試みはすべて「自然主義的誤謬(naturalistic fallacy)」を犯しており、ムーアはこれを「開かれた問い論証(open question argument)」によって示す。すなわち、善を快と定義しても「快なるものは善か?」と問うことには意味があり、両者が同じなら問いは閉じるはずだ。本書最終章は「理想(ideal)」を扱い、価値あるものは「人格的愛情」と「美的経験」であると説く。
【影響と意義】
本書はラッセル、ウィトゲンシュタイン、ブルームズベリー・グループ(ケインズ、ヴァージニア・ウルフら)に決定的影響を与え、20世紀分析倫理学の議論枠組みを設定した。「自然主義的誤謬」概念は規範倫理学・進化倫理学・神経倫理学の議論で今も生きている。
【なぜ今読むか】
AI倫理・進化心理学・神経科学が「善」を生物学・物理学に還元しようとする現代に、その還元の限界を考えるための古典的論証として読み直される価値がある。