フィロソフィーマップ

モラル・バウンダリー

ジョーン・C・トロント·現代

ケアの倫理を政治理論として展開したトロントの代表作

Amazonで見る
政治哲学

この著作について

ニューヨーク市立大学・ミネソタ大学で教えた政治理論家ジョーン・C・トロント(1952〜)が1993年に刊行した『Moral Boundaries: A Political Argument for an Ethic of Care』の邦訳。ケアの倫理を私的領域から政治理論へと拡張した記念碑的著作である。

【内容】

トロントは、近代政治理論が「公的領域」と「私的領域」を分け、ケアを後者に閉じ込めてきた境界線を「道徳的境界」として批判する。ケアを「世界を維持・継続・修復するための活動」と定義し、その四局面(注意・責任・能力・応答性)を整理する。続いて、ケア労働を不可視化してきた性別分業・人種分業・市場化の問題を分析し、「ケアする民主主義(caring democracy)」を新たな政治理念として提示する。ケアを正義の対立項としてではなく、正義の重要な構成要素として位置づける議論が中心である。

【影響と意義】

本書はギリガンもうひとつの声で、ノディングズケアリングに続くケア倫理学第三世代の代表作として、ケアの倫理を主流の政治哲学に位置づけた。後の『ケアする民主主義』(2013年)でその立場はさらに展開された。日本では岡野八代らの紹介を通じてケア論・フェミニズム政治理論の主要参照軸となっている。

【なぜ今読むか】

少子高齢化と労働力不足の時代に、ケア労働の社会的価値を理論的に基礎づけるための必読書である。

関連する思想

Amazonで見る