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『もうひとつの声で』
もうひとつのこえで
キャロル・ギリガン·現代
女性の道徳的声を発見しケアの倫理の基礎を築いた先駆的著作
哲学
この著作について
ハーバード大学の心理学者キャロル・ギリガンが長年の発達心理学的研究をもとに著した、ケアの倫理の出発点となった現代倫理学の重要著作。
【内容】
ギリガンは師コールバーグの道徳的発達段階論を検証するなかで、彼の尺度が男性的な「正義」の声を最上位に置き、多くの女性被験者を「発達の遅れ」と判定している事実に気づく。本書は、中絶をめぐる葛藤、ハインツのジレンマへの回答、思春期の少女たちへの長期インタビューを通じて、彼女たちが語る「関係と責任を重視する道徳」がけっして劣った段階ではなく、正義と並ぶもう一つの道徳的声であることを示す。権利と公正の論理に対し、具体的他者への配慮と応答の論理が、同等の重みを持つ倫理として描き出される。
【影響と意義】
本書はケアの倫理を学問的議論の中心に押し上げ、ネル・ノディングズ、ヴァージニア・ヘルド、ジョーン・トロントらへ連なるフェミニスト倫理学の系譜を開いた。発達心理学、道徳教育、看護倫理、福祉哲学、さらには臨床心理学における対話の実践にまで、大きな影響を及ぼし続けている。
【なぜ今読むか】
ビジネス倫理、AI倫理、ケア労働をめぐる議論などで、「正義」だけでは扱いきれない関係と応答の倫理が問われる場面が増えている。自分の中にすでにある複数の道徳的声に気づくための、信頼できる一冊である。