今
『今昔物語集《こんじゃくものがたりしゅう》』
こんじゃくものがたりしゅう
作者不詳·中世
天竺・震旦・本朝の説話1000余話を集めた平安末期の巨大説話集
文学日本
この著作について
平安時代末期の12世紀前半に編纂された日本最大の説話集。全31巻(3巻は散逸)から成り、天竺(インド)・震旦(中国)・本朝(日本)の三部構成で、1000話を超える説話を収める。編者は不詳で、複数の僧や文人の共同作業と推定される、日本文学史上の宝庫である。
【内容】
仏教説話を軸に、高僧の伝記、奇譚、妖怪・幽霊譚、盗賊・武士・貴族・庶民の生活場面まで、当時の社会のあらゆる階層と情景を活写する。「今は昔」の語り出しと「となむ語り伝へたるとや」の結句という独特の形式で、口承性を保った漢文訓読体の和漢混淆文が用いられる。物語は教訓的というより、人間の欲・愚・賢・聖を等価に並べて、中世的世界の奥行きを見せる。
【影響と意義】
芥川龍之介の『羅生門』『鼻』『藪の中』『地獄変』ほか多くの短編の原話を提供し、近代日本文学の想像力の水源となった。柳田国男の民俗学、中世文学研究、日本美術史でも第一級の参照源。
【なぜ今読むか】
中世日本人の多彩で矛盾に満ちた世界観を、短い説話群を通して直接味わえる古典。