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藪の中

やぶのなか

芥川龍之介·近代

関係者の証言が食い違う奇妙な殺人事件を描いた芥川の代表短編

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文学

この著作について

芥川龍之介が1922年に発表した短編小説。平安末期の今昔物語集《こんじゃくものがたりしゅう》を題材に、関係者7人それぞれの証言を並べた実験的構成で、黒澤明監督羅生門(1950年)の原作の一つとなった。

【内容】

山中で発見された武士の死体をめぐり、木樵、旅法師、放免、媼、盗人・多襄丸、武士の妻・真砂、そして死者自身(巫女の口寄せを通じて)の七つの証言が並ぶ。盗人は自分が殺したと誇り、妻は自分が殺したと言い、死者は自害したと語る—三人の当事者がそれぞれに異なる物語を語り、事件の真相は読者にも作者にも永遠に藪の中である。証言の矛盾そのものが、人間の自己欺瞞と語りの不可能性を浮き彫りにする。

【影響と意義】

「藪の中」は日本語では「真相が不明な事態」を指す慣用句にまでなった。黒澤明の映画『羅生門』が国際的に評価され、主観の複数性を描く語りのスタイルは「羅生門効果(Rashomon effect)」として法学・心理学・物語論の用語になった。芥川の代表的傑作の一つ。

【なぜ今読むか】

SNS時代の「真実」の相対性、事実と語りの関係を考えるうえで、100年前の短編がなお最良の教科書になる。

著者

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