貨
『貨幣論』
かへいろん
岩井克人《いわいかつひと》·現代
貨幣の自己循環的本質を論じた経済哲学の到達点
哲学社会思想
この著作について
経済学者・岩井克人(いわいかつひと、1947〜)が1993年に筑摩書房から刊行した経済哲学書。サントリー学芸賞(政治・経済部門)を受賞し、1998年にちくま学芸文庫に収められた。マルクス『資本論』の価値形態論を内在的に読み直しながら、貨幣の本質を「自己循環的論法」として解明する。
【内容】
本書は商品貨幣説と法貨説の二つの貨幣論を批判的に検討するところから始まる。岩井は「貨幣として通用しているから貨幣である」という循環構造こそが貨幣の本質であり、貨幣は実体ではなく差異と信用の体系であると論じる。続いてハイパーインフレーション・恐慌・金融危機といった近代資本主義の破綻局面が、この自己循環の脆さの顕在化として読み解かれる。
【影響と意義】
著者の『会社はこれからどうなるのか』と並ぶ一般向けの代表作であり、新古典派経済学の「均衡」像を問い直す日本発の経済哲学として国際的にも参照される。柄谷行人《からたにこうじん》の交換様式論や東浩紀《あずまひろき》のポストモダン論にも引き継がれた。
【なぜ今読むか】
暗号資産・中央銀行デジタル通貨・MMTといった新しい貨幣現象を考えるうえで、貨幣の本質を捉え直す出発点として読み返す価値がある。