蜂
『蜂の寓話』
はちのぐうわ
バーナード・マンデヴィル·近代
「私悪は公益」のテーゼで近代経済思想の先駆となった寓話詩
経済哲学
この著作について
オランダ生まれでイギリスに帰化した医師・著述家バーナード・マンデヴィル(1670〜1733)が1714年に刊行した『The Fable of the Bees: Or, Private Vices, Public Benefits』の邦訳。寓話詩と評論からなる近代経済思想の先駆的著作である。
【内容】
本書の中心は風刺詩「ぶつぶついう蜂の巣、または正直になった悪党どもの物語」である。あらゆる悪徳(虚栄・浪費・嫉妬・奸計)が活発に営まれていた繁栄する蜂の巣が、ある日全員が清廉で慎ましくなった結果、商業も芸術も停滞して衰退してしまうという寓話を提示する。これに長文の註解と「徳の起源についての探究」を付し、「私的悪徳が公的利益を生む(Private Vices, Public Benefits)」という挑発的なテーゼを論証する。利己心と消費欲が経済を駆動するという主張は、当時のキリスト教道徳主義との激しい衝突を呼んだ。
【影響と意義】
アダム・スミス『道徳感情論』『国富論』はマンデヴィルへの応答として読めるとされ、ケインズも「世界文学において最も古くて最も影響力のある政治経済学」の一冊と評した。利己心と社会秩序の関係をめぐる近代思想の出発点として、現代でも経済思想史・道徳哲学の必読文献である。
【なぜ今読むか】
資本主義と道徳の緊張関係を考えるとき、その問いの源流に触れるための古典である。