『肉の告白』
にくのこくはく
ミシェル・フーコー·現代
性の歴史第四巻、初期キリスト教と主体化の死後刊行の書
この著作について
フランスの哲学者ミシェル・フーコー(Michel Foucault、1926〜1984)の『性の歴史』第四巻として2018年にガリマール社から死後刊行された『Les aveux de la chair』の邦訳である。日本語版は新潮社から慎改康之《しんかいやすゆき》訳で2020年に刊行された。フーコーは生前ほぼ完成させていたが死により未刊のまま遺され、遺族と編者フレデリック・グロらの判断で公刊された。
【内容】本書は『性の歴史』の方法的転換以後、第二巻『快楽の活用』第三巻『自己への配慮』が古代ギリシア・ローマの性倫理を扱ったのを受け、初期キリスト教(二〜五世紀)が性をどう問題化したかを論じる。テルトゥリアヌス、アウグスティヌス、修道院規則、改悔(ペニテンティア)の制度化、夫婦間性愛の規範化、独身・処女性の評価、欲望と意志の分離といったテーマを、教父テクストの精読を通じて辿る。「自己が自己と取り結ぶ関係」が、欲望を真理に向けて告白する仕組みへと組織化されていく過程が浮かび上がる。
【影響と意義】本書は『自己への配慮』(1984)『快楽の活用』(1984)(2018、死後刊行)とともに、晩年フーコーの倫理的転回を示す基本文献である。ピエール・アドの古代哲学研究、ジャン=リュック・ナンシーや東浩紀《あずまひろき》の主体論にも影響を与え、キリスト教思想史研究と現代主体論の接点として広く参照される。日本ではフーコー晩年研究の決定的資料となった。
【なぜ今読むか】告白と自己分析が習慣化された現代において、それがいかに歴史的に組織化された権力=知の装置であるかを理解する手がかりになる。SNS時代の「自己開示」を批判的に捉え直す思考の補助線となる一冊である。