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ヨ

『ヨブ記』

よぶき

旧約聖書·古代

義人がなぜ苦しむかを問う旧約聖書の知恵文学の最高峰

宗教哲学

この著作について

旧約聖書「諸書」のひとつとして編まれた、紀元前6〜4世紀ごろ成立とされるヘブライ語の文学的・哲学的詩編。世界文学屈指の作品の一つに数えられる古典である。

【内容】

義人ヨブは家畜・家・子供・健康・名声というすべてを失う極限の災厄に襲われる。最初は神の主権を受け入れて沈黙していたヨブだが、訪ねてきた三人の友人エリパズ・ビルダド・ツォファルが「お前に隠れた罪があるからだ」と説くのを退け、神に向かって自らの苦しみの理由を問いかける。激しい問答の末、神は嵐の中から現れて宇宙の壮大な秩序を示し、人間の理解を超えた創造の神秘を提示する。ヨブは沈黙し、最終的には倍以上の祝福を回復するが、その「答え」自体が神義論の謎を残したままで終わる。

【影響と意義】

本書はキルケゴール『反復』、ユング『ヨブへの答え』、ワイト『ヨブとの対話』、レヴィナス、エリ・ヴィーゼルなど、苦しみと神の関係をめぐる近現代の宗教哲学・神義論の中心的参照テクストとなった。プラトンやバッハ、ブレイクの芸術にも繰り返し題材化されている。

【なぜ今読むか】

理由のない苦しみという普遍的経験に、最も古く、最も深い問いの言葉を与えた人類共通の遺産である。

どの訳で読むか

ヨブ記だけを1冊の文庫で、註釈と解説つきで読むなら岩波文庫の関根訳が目安になる。聖書全体の訳のなかで読むなら、聖書協会共同訳、新共同訳、新改訳2017のいずれにも入っている。ヘブライ語の本文ではなく、古代のギリシア語訳から訳したものを読みたい人には秦訳がある。

  • 関根正雄訳岩波書店・岩波文庫、1971年

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    ヨブ記だけを収めた文庫で、230頁。目次では本文を「序曲」、第一回から第三回までの「討論」、「ヨブの最後の弁論」「エリフの弁論」「神の弁論とヨブの答え」「終曲」に分け、それぞれに小見出しを立てる。巻末に註釈と解説がつく。電子書籍もある。

  • 聖書協会共同訳日本聖書協会、2018年

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    カトリックとプロテスタントの18の教派・団体が参加した共同訳で、2018年12月に出た。版元は、礼拝での朗読にふさわしい、格調高く美しい日本語を目指したと説明している。聖書全体の中の一書として収められている。

  • 新共同訳日本聖書協会、1987年

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    1969年から18年をかけて完成した共同訳。聖書全体の中の一書として収められている。

  • 新改訳2017いのちのことば社、2017年

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    それまでの新改訳を全面的に改訂したもので、2017年9月にキリスト教書店に並んだ。聖書全体の中の一書として収められている。

  • 旧約聖書翻訳委員会訳岩波書店・岩波オンデマンドブックス、2018年

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    岩波書店の旧約聖書の「IV 諸書」の上巻で、詩篇とヨブ記を収める。B6判並製、454頁で、版元のサイトでの在庫表示は「オンデマンド制作」。同じ委員会の訳によるヨブ記は、2004年に箴言と合わせた分冊(並木浩一・勝村弘也訳)としても出ており、版元はこれを「新鮮かつ挑戦的な新訳」と紹介しているが、この分冊は版元のサイトで品切れと表示されている(2026年10月時点)。

  • 秦剛平訳青土社、2023年

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    ヘブライ語の本文ではなく、紀元前3世紀ごろからアレクサンドリアで進められたギリシア語訳(通称「七十人訳」)のヨブ記を訳したもの。A5判、260頁で、注と解説がつく。

ほかに、文語で読める岩波文庫の文語訳 旧約聖書 III 諸書(2015年、336頁)があり、ヨブ記のほか詩篇、箴言、伝道之書、雅歌を収める。1955年に旧約が出た口語訳は、聖書全体を1冊にした版が日本聖書協会のサイトに並ぶ(品切れの版もある)。ヨブ記1〜21章のヘブライ語原文に日本語の逐語訳を添えた、ミルトス・ヘブライ文化研究所編の巻(ミルトス、2025年)もある。

さらに深く

【内容のあらまし】

全42章のうち、初めの2章と42章7節以下は散文の物語で、そのあいだを詩の対話が埋めている。

ウツの地のヨブは、完全で正しく、神を畏れて悪を避ける人で、息子7人と娘3人、羊7000頭とらくだ3000頭をもつ東方一の人物だった。子らが宴会を開くたびに、心のなかで神をのろったかもしれないと、朝早くいけにえをささげた。天上では、神の子らにまじってサタンが主の前に出る。主がヨブを誇ると、サタンは、ヨブはいわれもなく神を畏れるでしょうかと答える。主は、ヨブ自身には手を出さないという条件で、持ち物に手を出すことを許す。

ヨブのもとへ使いが次々に駆けこみ、牛とろば、羊、らくだ、そして長男の家で宴会中だった子らが失われたと告げる。どの使いも、自分ひとりが逃れて知らせに来たと言い終える。ヨブは上着を裂き、頭をそって地に伏し、裸で母の胎を出たのだから裸でそこへ帰ろうと言う。二度目の天上でサタンは「皮には皮を」と言い、命だけは奪うなという条件で許しを得て、ヨブを足の裏から頭のてっぺんまで腫れ物で打つ。ヨブは灰の中に座り、陶器のかけらで体をかく。見舞いに来た三人の友は、七日七夜、一言も口をきかない。

沈黙を破るのはヨブで、第3章で自分の生まれた日をのろう。友とヨブが交互に語る弁論が三巡する。エリパズは、罪のない者が滅びたことがあるかと問い、ビルダドは、神が公義を曲げるだろうかと迫る。ヨブは、神と論じ合いたいのに二人のあいだに手を置く仲裁者がいないと訴え、友を役に立たない医者、みじめな慰め手と呼ぶ。第19章では、わたしをあがなう者は生きていると言い切る。三巡目のビルダドの言葉は6節で終わり、ツォファルはもう話さない。第28章は、人は地の底から銀や金を掘り出せても知恵の在りかは見いだせず、その道を知るのは神だと歌う。

ヨブはかつての日々と今の屈辱を語り、潔白の誓いを重ね、全能者が答えてくれるようにと求める。ヨブの言葉は終わったと記されたところへ、若いエリフが怒って口をはさむ。

第38章、主はつむじ風の中から、わたしが地の基を据えたとき、おまえはどこにいたのかと問う。明けの星が共に歌った日、海を閉じこめた戸、すばるとオリオン、野やぎの出産、だちょう、馬、鷲へと問いは続き、ヨブは手を口に当てる。二度目の言葉はベヘモットとレビヤタンを描く。ヨブは、耳で聞いていたあなたを今この目で見ると言い、塵と灰の中で悔いると答える。

結びの散文で、主はエリパズたちがヨブのように正しく語らなかったことを怒る。ヨブが友のために祈ると、持ち物は二倍になる。のちに生まれた三人の娘は名を記され、兄弟と並んで財産を受け継いだ。

この著作で扱う問い

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