弁
『弁名』
べんめい
荻生徂徠《おぎゅうそらい》·近代
儒学の基本概念を一語ずつ語義へ遡って再定義した古文辞学の辞典
哲学
この著作について
荻生徂徠《おぎゅうそらい》が『弁道』と並行して著した儒学概念の解析書で、享保年間前半の成立。二巻本。
【内容】
本書は、仁・義・礼・智・信・道・徳・天・命・性・心など、儒学の基本概念をひとつずつ取り上げ、古代中国の用例(『尚書』『詩経』『論語』『孟子』ほか)に戻ってそれぞれの本来の意味を再構成する。朱子学が「理」を媒介にして諸概念を統一的に解釈するのに対して、徂徠は「古文辞《こぶんじ》」、すなわち上古の具体的な語義に戻ることで、抽象的な形而上学を切り離そうとする。結果として、「仁」は他者への配慮そのもの、「性」は人それぞれ異なる天からの授かり物、というように、人間観・政治観が大きく書き換えられる。「敬」「誠」「慎独」など朱子学的修養概念も、古代の制度や儀礼との関係に差し戻して再定義される。
【影響と意義】
『弁道』とともに徂徠学の双璧をなし、儒学史研究・日本思想史・言語思想研究に決定的な影響を及ぼした。清代の考証学、本居宣長《もとおりのりなが》の文献学とも通底する方法論的鋭さで知られる。
【なぜ今読むか】
言葉を遡って意味を掴む方法は、情報過剰の時代にますます有効である。
著者
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