精
『精読 アレント『人間の条件』』
あーれんとにゅうもん
牧野雅彦·現代
アーレント思想の全体像を描く入門書
哲学入門
この著作について
政治学者・牧野雅彦《まきのまさひこ》が、ハンナ・アーレントの思考の全体像を生涯と主要著作に即して描いた入門書。
【内容】
本書はまず、ドイツ系ユダヤ人としてのアーレントの生い立ち、ハイデガー、ヤスパースに学んだ青年期、ナチスからの逃亡、パリと合衆国への亡命、収容所解放直後にルポを書いた体験を概観する。そのうえで、『全体主義の起源』におけるナチズム・スターリニズムの構造分析、『人間の条件』の労働・仕事・活動という三区分、『イェルサレムのアイヒマン』の「悪の陳腐さ」、『革命について』のアメリカとフランス革命の比較、『精神の生活』の思考・意志・判断論までが、時系列で手際よく整理される。難民、人権、歴史的記憶をめぐる思想家としての側面にも光が当てられる。
【影響と意義】
アーレントは大部の体系的政治理論を残さなかったため、全体像を把握するうえで良質な入門書の役割は大きい。戦後日本でも、丸山眞男《まるやままさお》から近年のフェミニズム・難民論に至るまで、彼女は絶えず参照されてきた。
【なぜ今読むか】
民主主義の後退、権威主義的指導者、難民と移民、SNS上の「凡庸な悪」といった現代的論点を、一人の思想家を軸に俯瞰できる。自分の社会認識を鍛え直したい人の最初の一冊として適している。