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コンドルセのパラドックス:多数決が堂々めぐりになります

AはBに勝ち、BはCに勝ち、CはAに勝つ。全員がまともに考えているのに、集団の意思が輪になって閉じない。

町内会の集会所をどうするかで、案が3つ出ました。総当たりで多数決を取ると、AはBに勝ち、BはCに勝ち、そしてCはAに勝ちます。

一番の案が決まりません。誰も間違えていないのに、勝者が輪になって閉じない。

まずは選んでみてください。

まず、選んでみる

町内会の集会所をどうするかで、案が3つ出ました。Aは現地で建て替える、Bは駅前の空き店舗を借りる、Cは集会所を持たず使うたびに会場を借りる。集会所をいちばん使っているのは、遠出のしにくい高齢の会員です。30人が2つずつ比べる投票をしたところ、AはBに18対12、BはCに19対11、CはAに17対13で勝ちました。どの案も、ほかのどれかに負けています。進行役はあなたです。

どう決めますか。

正解はありません。選ぶと、その答えがどの前提に乗っているかが出ます。

この問いを見つけた人

18世紀フランスの数学者コンドルセです。フランス革命期に活躍し、投票制度の設計に取り組みました。

彼が見つけたのは、一人ひとりの好みには順番がついているのに、多数決で集めると順番がなくなるという現象です。

たとえば3人がこう考えているとします。

甲 A > B > C
乙 B > C > A
丙 C > A > B

A対Bなら甲と丙でAの勝ち。B対Cなら甲と乙でBの勝ち。C対Aなら乙と丙でCの勝ち。 一人ひとりはまともに順番をつけているのに、集団としては輪になります。

コンドルセ自身はこの発見のあと、革命の混乱のなかで逮捕され、獄中で亡くなりました。

4つの答えは、それぞれ別の哲学に立っている

弱い側に寄せる。遠出のしにくい会員が通える案に絞る。いちばん条件の悪い側を先に見る。多数決を諦めて、別の基準を持ち込むやり方です。ロールズの発想に近い。

決め方をそろえる。決め方をもう一度1つ選び、その順に機械的に決める。中身より手順を先に置く。手続きが正しければ結果を受け入れるという立場です。

立場で決める。進行役の判断で1案に決める。輪を断ち切るには、外から一手入れるしかないというのが、この問題の実務的な結論でもあります。

決めない。どの案もほかに負けている以上、選ぶ材料がそろっていない。正直な答えです。実際、選ぶ根拠が無いのですから。

「民意」が存在しないことがある

この発見の重みは、単に投票がややこしいという話ではありません。

一人ひとりに一貫した好みがあっても、集団としての好みが存在しない場合がある。 つまり「みんなの意思」というものが、原理的に定まらないことがあります。

議論を尽くせば分かるという種類の話ではありません。全員が完全に正直で、完全に情報を持っていても、輪はできます。

だから「民意に従う」と言うとき、その民意が実在するかどうかは、決め方によって作られている可能性があります。

いま、この問いが出てくる場所

議題を出す順番を変えるだけで、結論が変わることがあります。輪になっているときは、勝ち残り方式で最後の対決に勝った案が、そのまま1位になってしまうからです。 消したい案を早い段階でぶつければ、その案は必ず脱落します。

これを利用すれば、進行役は結論を操作できます。議事の順番が政治になるのは、この構造があるためです。

対策としては、総当たりの結果を全部見せる、順位に点をつける方式を使う、決め方を先に固定して途中で変えない、といった手が取られます。どれも輪を消すのではなく、輪が出たときの扱いを先に決めておく形です。

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