同じ商品を扱う2社が、値下げを繰り返しています。どちらも下げ続ければ、2社とも赤字になります。 自分だけがやめれば、客は相手に流れます。
まずは選んでみてください。
まず、選んでみる
同じ商品を扱う2社が、値下げを繰り返しています。どちらも下げ続ければ、2社とも赤字になります。自分だけが下げるのをやめれば、客は相手に流れます。相手が先にやめれば、自分が残ります。
下げ続けますか。
正解はありません。選ぶと、その答えがどの前提に乗っているかが出ます。
この構造の名前
若者が二台の車を正面から走らせ、先に避けたほうが臆病者と呼ばれる。その遊びの名前が、そのまま理論の名前になりました。
囚人のジレンマとの違いは、**最悪の結果が「両者とも突き進む」**であることです。囚人のジレンマでは、裏切られたときが最悪でした。チキンゲームでは、両方が降りないときが最悪です。
だから相手が突き進むと分かっていれば、降りるのが正解になります。すると、先に「自分は絶対に降りない」と信じさせた側が勝ちます。
4つの答えは、それぞれ別の哲学に立っている
自分の得で決める。下げ続ける。先にやめたほうが客を失う。これは一手ずつ見れば正しいのですが、続けると両者が倒れます。
相手の出方を読む。やめる。2社とも下げ続ければ、勝っても残るものがない。読みが深いほど降りやすくなるのがこのゲームの特徴で、囚人のジレンマとは逆です。
決め方をそろえる。どこまで下げるかの線を先に決めて、そこで止める。自分を縛ることで、相手に読ませるやり方です。
立場で決める。下げるかどうかは、自分の一存で決めることではない。決める権限を自分から外すことで、勝負そのものから降りています。
弱さを見せるほうが強い、という逆転
チキンゲームには、有名な必勝法があります。ハンドルを外して、相手に見せることです。
避けられないと相手に信じさせれば、相手が避けるしかありません。選択肢を減らすことが、力になる。
これは日常でも起きています。「うちは値引きしない方針です」と公表する。交渉の権限を持たない担当者を出す。自分の手を縛って見せることが、譲歩を引き出します。
ただし危険です。両者がハンドルを外したら、確実に衝突します。
抜け方は、勝つことではありません
この構造でいちばん賢いのは、勝負の形を変えることです。
値下げ以外の軸で競う。公的な規制で下支えしてもらう(事業者どうしで価格を取り決めるのは、独占禁止法が禁じるカルテルにあたります)。第三者に線を引いてもらう。どれも「勝つ」ではなく「この勝負をやめる」方向を向いています。
チキンゲームの中で最善手を探しているかぎり、両者は消耗し続けます。問題は手ではなく、盤のほうにあります。
いま、この問いが出てくる場所
価格競争、残業時間の張り合い、SNS での言い合い、軍拡。どれも、降りたほうが負けに見える構造です。
冷戦の核抑止は、まさにこの理論で分析されました。互いに報復能力を見せ合うことで、どちらも撃てなくする。ハンドルを外して見せる戦略が、国家の規模で実行されていました。
そして、ぎりぎりで衝突しなかったのは、運が良かった面もあります。