私
『私たちはお互いに何を負っているのか』
わたしたちはおたがいになにをおっているのか
T・M・スキャンロン·現代
契約主義倫理学の現代的代表作。理由付け不可能性を道徳の核に据える
倫理
この著作について
ハーバード大学の哲学者トマス・スキャンロンが1998年に公刊した、現代契約主義倫理学の主著(原題『What We Owe to Each Other』)。
【内容】
スキャンロンは、ある行為が道徳的に不正であるとは、「適切に動機づけられた人々が一般的合意のための基礎としても合理的に拒否できないような原則」によって禁じられている場合だ、と定式化する。これは規則功利主義でもカント的義務論でもない第三の道で、「相互正当化(justifiability to others)」を倫理の核に据える。本書は人称的価値、約束、責任、欲求と理由の関係、寛容など多くの主題を扱う密度の高い論考であり、相手に「説明できない」ことの倫理的重みを精緻に論じる。
【影響と意義】
ロールズの契約主義を倫理学一般に拡張する試みとして高く評価され、現代の規範倫理学・メタ倫理学・政治哲学に深く浸透した。「合理的拒否可能性」基準は、医療倫理・AI倫理・公共政策の評価にも応用される。日本では平尾透らによる紹介を経て、規範倫理学の必読文献となっている。
【なぜ今読むか】
対立する立場を持つ他者にどう道徳的に応答するかを問う本書の枠組みは、SNSの炎上文化や対立深化の時代にこそ実践的に響く。