所
『所有とは何か』
しょゆうとはなにか
プルードン·近代
「財産は盗みだ」という宣言でアナーキズム思想の原点となった著作
政治哲学
この著作について
フランスの労働者出身の思想家ピエール=ジョゼフ・プルードンが著した、アナーキズム運動の旗印となった挑発的な政治経済学書。
【内容】
全体は地味な論証の形をとりつつ、冒頭の「所有、それは盗みである」という一句が読者を強烈に引き込む。プルードンは、所有権を神の贈り物、先占、労働、契約、法といった諸理論から順に検討し、それぞれの正当化が原理的に破綻することを論じる。重要なのは、彼が否定するのは生産や他者の労働から不労所得を得る所有権(プロプリエテ)であって、自分の使用と労働に根ざす占有(ポッセション)ではない、という点である。末尾では「私はアナーキストである」と宣言しつつ、それを混沌ではなく「支配者なき秩序」として定義し直す。
【影響と意義】
本書によってアナーキストという語が初めて肯定的な自称として用いられ、以後の近代アナーキズム運動の出発点となった。マルクスは当初プルードンに学び、のちに『哲学の貧困』で激しく批判する。バクーニン、クロポトキンへと続く系譜も、本書との対話のなかで形成された。
【なぜ今読むか】
プラットフォーム企業による富の集中、住宅問題、デジタル知的財産権の議論が活発化する現代、『所有とは何か』を原理から問い直す本書の挑発は、まだ有効性を失っていない。古典的な左派の一つの源流として読む価値がある。