芸
『芸術とは何か』
げいじゅつとはなにか
レフ・トルストイ·近代
感情の伝染として芸術を再定義する徹底した芸術論
哲学芸術ロシア文学
この著作について
レフ・トルストイが1897年から98年にかけて連載・公刊した芸術論。後期の宗教思想と地続きの倫理的視点から、『芸術とは何か』「何が真の芸術と呼べるか」を根底から問い直した、近代芸術論の古典の一つである。
【内容】
トルストイは、芸術を美の表現や形式の遊戯としてではなく、「ある人が体験した感情を他者に伝染させる活動」として定義する。良い芸術とそうでないものを分ける基準は、形式の巧拙ではなく、伝えられる感情の質にある。普遍的な兄弟愛・宗教的感情を伝えるものを「真の芸術」と呼び、上流階級の退屈しのぎや排他的サロンのための作品を「偽の芸術」として斥ける。この基準のもと、シェイクスピアの後期作、ベートーヴェンの後期四重奏曲、ワーグナーの楽劇までもが手厳しく批判される一方、農民の労働歌や聖書の物語は高く評価される。
【影響と意義】
芸術を専門家のあいだの様式論争から引きはがし、社会と倫理の枠組みのなかで論じる視点を打ち出した点で、後のマルクス主義美学、宗教芸術論、ベンヤミンのアウラ論などに長く影を落とした。難解な近代芸術への一般読者の戸惑いを代弁する書物としても読み継がれている。
【なぜ今読むか】
生成AIが「芸術らしさ」を量産する時代に、作品を支えるのは何かという問いをここまで徹底して掘り下げた書物は今もまれである。
著者
関連する哲学者と話してみる
