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『〈私〉のメタフィジックス』
わたしのめたふぃじっくす
永井均《ながいひとし》·現代
「なぜこれが私なのか」という独自の問いを展開する日本哲学の試み
哲学日本思想
この著作について
東京大学・千葉大学・日本大学で教えた哲学者・永井均《ながいひとし》(1951〜)が1986年に勁草書房から刊行した代表作。デビュー作に続いて〈私〉問題を論じた本格的な独自哲学の書である。
【内容】
本書の中心問題は、客観的に見れば一人の人間にすぎない自分が、なぜ世界の中で唯一の〈私〉として存在しているのかという問いである。永井はこの問いを「他人にも私がある」という三人称的な事実から区別し、〈私〉が世界の特殊な中心であるという独我論的事実は通常の言語では表現できないと論じる。デカルト、ウィトゲンシュタイン、パーフィットの議論を吟味しつつ、世界が〈この私〉を含むということの不思議さを哲学の出発点とすべきだと主張する。
【影響と意義】
本書はその後の永井『〈私〉の存在の比類なさ』『私・今・そして神』などの一連の独我論的探究の起点となり、日本哲学の独自テーマとして〈私〉問題を確立した。永井のテーマは入不二基義、青山拓央《あおやまたくお》ら後続の世代に継承され、英米分析哲学とは別系統の現代日本独我論の系譜を形づくっている。
【なぜ今読むか】
哲学のもっとも根源的な問いを、教科書的な知識ではなく自分自身の存在の問題として体験するための、稀有な読書経験を提供する。