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『〈私〉の存在の比類なさ』
わたしのそんざいのひるいなさ
永井均《ながいひとし》·現代
独我論を再構築した永井哲学の主著
哲学現代思想
この著作について
哲学者・永井均《ながいひとし》(ながいひとし、1951〜)が1998年に勁草書房から刊行した著作である。同年の毎日出版文化賞ノミネートとなり、後の文庫化により広く読まれている。永井のライフワークである「〈私〉問題」を体系的に展開した中期主著として、日本の独我論的・分析哲学的探究の最重要文献の一つに数えられる。
【内容】本書は「世界はなぜ〈この私〉を含むのか」という問いを哲学の出発点に据える。一人称的世界の存在は、他者・社会・客観的世界の存在とは別の不思議さを持つ。永井はこの不思議さを「〈私〉の比類なさ」と呼び、デカルト、バークリー、シェリング、ウィトゲンシュタイン、パーフィットの議論を吟味しつつ、世界が〈この私〉を含むということの不思議さを哲学の出発点とすべきだと主張する。第三章で創造神の語法を吟味しつつ、独我論を従来の唯心論や懐疑論から区別し、独自の「累進構造」モデルへ展開する。
【影響と意義】本書はその後の永井『私・今・そして神』『翔太と猫のインサイトの夏休み』などの一連の独我論的探究の起点となり、日本哲学の独自テーマとして〈私〉問題を確立した。永井のテーマは入不二基義《いりふじもとよし》、青山拓央《あおやまたくお》、谷口一平らに引き継がれ、現代日本の分析形而上学の中心テーマの一つとなっている。ウィトゲンシュタイン研究、心の哲学、人格同一性論の文脈でも参照される。
【なぜ今読むか】生成AI・SNS・脳科学が「自己」を平準化していく時代に、それでも消えない「〈この私〉」の不思議さを問う本書は、自己理解の最前線に立たせてくれる。