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『ブーガンヴィル航海記補遺』
ぶーがんゔぃるこうかいきほい
ドニ・ディドロ·近代
タヒチを鏡にヨーロッパの道徳を相対化する対話篇
哲学社会思想
この著作について
ディドロが1772年頃に執筆した対話篇で、公刊は没後の1796年。原題は『Supplément au voyage de Bougainville』。フランスの探検家ブーガンヴィルが1771年に出版したタヒチ航海記を題材に、ヨーロッパの道徳と「未開」とされた社会の道徳とを対比させる。
【内容】
本書は枠組み的な対話と、タヒチ老人の演説、宣教師とタヒチ人オルーとの対話など複数の層で構成される。タヒチでは性愛が共同体の繁栄に結びつき、罪悪感や所有権で縛られていない様子が描かれる。これに対し、宗教的禁忌と私有財産で固められたヨーロッパ社会の倫理は、自然から逸脱した抑圧として批判される。
【影響と意義】
ルソーの自然状態論を大胆に発展させ、文化相対主義と性の自由を結びつけた啓蒙文学の傑作である。植民地主義への批判的視座も随所に含まれており、後のレヴィ=ストロースの『悲しき熱帯』に至る人類学的想像力の源流のひとつに位置づけられる。
【なぜ今読むか】
グローバル化の中で文化の差異と普遍性をどう考えるかという問いは、本書が二百数十年前に投げかけた問いの延長線上にある。性、所有、宗教を結びつけて読み解く批評的想像力の教科書としても、なお新鮮な書物である。
著者
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