ソ
『ソフィスト』
プラトン·古代
イデア論の自己批判を含むプラトン後期の代表的対話篇
哲学存在論
この著作について
プラトン後期の対話篇で、『テアイテトス』『政治家』と三部作をなす。ソクラテスがほぼ脇役に退き、エレアからの客人が議論を主導する点に、プラトン哲学の重大な自己変革が刻まれている。
【内容】
冒頭、ソフィストとは何かを定義する試みから始まる。「分割と総合」の方法によって、ソフィストは「金銭目的の説得術者」「魂の浄化者を装う者」と次々に区別されるが、最終的に「偽(ありもしないこと)を語る者」として捉え直される。ここで本書の核心が現れる。「あらぬもの(非存在)はある仕方で存在する」というパルメニデス批判が展開され、運動・静止・同・他という五つの最高類による存在論的綱領が提示される。プラトン自身がイデア論の硬直した二元論を相対化し、より動的な存在論へ進んだ画期的テクストである。
【影響と意義】
ハイデガーが『存在と時間』で本書冒頭の存在論的問いを引いて以来、20世紀現象学にとって決定的なテクストとなった。分析哲学者クワインやデイヴィドソンも本書の存在論を参照する。日本では田中美知太郎、納富信留らによる訳と研究が蓄積されている。
【なぜ今読むか】
「真と偽」「ある・ない」をめぐる根本問題は、フェイクニュース時代にむしろ切実である。プラトンが言語と存在の関係を切り開いた現場を、対話の運動として追体験できる。