テ
『テアイテトス』
プラトン·古代
知識の定義を真正面から論じたプラトンの認識論的対話篇
哲学
この著作について
プラトン後期の対話篇で、若い数学者テアイテトスを相手にソクラテスが「知識(エピステーメー)とは何か」を徹底的に問いつめる認識論の古典。
【内容】
対話はまず、数学の才能ある少年テアイテトスにソクラテスが親しげに語りかける場面から始まる。ソクラテスは自分を「思想の産婆」にたとえ、相手の胸の内の考えを外に引き出して吟味していく。続いて、知識についての三つの定義が順に検討される。第一に「知識とは知覚である」という立場、第二に「知識とは真なる思いなし(真なる信念)である」という立場、第三に「真なる信念に理拠(ロゴス)を加えたものが知識だ」という立場である。いずれもソクラテスの反論によって決着のないアポリアへと追い込まれ、対話は「知識とは何かはまだ明らかではない」という告白とともに閉じられる。
【影響と意義】
第三の定義はのちに「正当化された真なる信念(JTB)」として西洋認識論の標準テンプレートとなり、二十世紀半ばのエドマンド・ゲティアによる反例が提示されるまで二千年以上にわたって議論の基盤となった。現代認識論の出発点は、実質的にこの対話篇の一節にあるといってよい。
【なぜ今読むか】
「情報」と「知識」の境界、事実と説得の区別、AIの出力をどこまで知識と呼べるかといった現代的な問いは、本書の三つの定義をなぞり直すことで驚くほど鮮明に整理される。短く読み通せる哲学的対話として今も新鮮である。