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第二の性

だいにの せい

ボーヴォワール·現代

「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」

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哲学

この著作について

シモーヌ・ド・ボーヴォワールが1949年に公刊した、女性の抑圧の構造を包括的に分析したフェミニズムの金字塔。

【内容】

全2巻の大著。第1巻で生物学・精神分析・唯物史観など、さまざまな学問が女性をどう捉えてきたかを批判的に検討し、続いて神話や文学における「女性像」が男性中心の眼差しから作られてきたことを暴く。第2巻では、幼少期・思春期・結婚・母性・老いといった女性の人生の各段階が具体的に描かれ、「女らしさ」は生物学的に決まるのではなく、社会的に作り上げられるものだと論じられる。「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という有名な一句はここに置かれる。女性は常に男性を主体としたうえでの「他者(第二の性)」として位置づけられてきた、という診断が全体を貫く。

【影響と意義】

第二波フェミニズムの理論的基盤となり、ジェンダー研究の出発点となった。バトラーの「ジェンダーのパフォーマティヴィティ」もこの著作の延長線上にある。

【なぜ今読むか】

女性の経験を哲学的に分析するという試み自体が、当時は前例のないものだった。ジェンダー・フェミニズムの議論が活発な現代こそ、原点として読み直す価値がある。

さらに深く

【内容のあらまし】

冒頭、ボーヴォワールは女性とは何かと問い、男はあえて自分を男と定義しなくてよいのに、女は常に女として位置づけられ続けてきたと指摘する。本書はこの非対称性を丹念に解きほぐしていく長大な論考である。

第一巻はまず学問的言説の検討から始まる。生物学が女性をどう描いてきたか、精神分析が母性をどう理論化してきたか、史的唯物論が女性の従属を経済構造でどう説明してきたか。彼女はそれぞれを取り上げ、いずれの説明も女性を運命づけられた他者として固定してしまうと批判する。続いて歴史を遡り、狩猟採集の時代から農耕、古代、中世、近代までを通して、女性が公的な営みから締め出されてきた過程を辿る。さらに神話の章では、聖母から悪女までの両極端なイメージが、男性の不安と欲望の投影として機能してきたことが暴かれる。モンテルランからスタンダール、ローレンスまで、五人の作家における女性像が個別に分析される。

第二巻で議論は具体的な人生の段階に移る。少女は身体の変化や母娘の葛藤を通じて、自分が女として位置づけられていく過程を経験する。思春期で性が意識され、結婚で夫の家へ移り、母となって子を世話し、やがて閉経と老いを迎える。それぞれの段階で、社会が用意する女らしさの型に自分を合わせていく日常が、克明に描かれる。「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」というあの一句が置かれるのはここである。

後半では結婚、母性、売春、ナルシシズム、恋愛、神秘主義といった具体的な女性のあり方が、人称的な記述とともに分析される。それぞれは抑圧の現れであると同時に、女性が状況に対して採る応答の戦略として捉え直される。

結部でボーヴォワールは、男性と女性が他者を抑圧することなく、ともに自由な主体として認め合う未来を示唆する。問題は男女の差をなくすことではなく、その差が支配の道具にならない世界を目指すことだ、と本書は結ばれる。

著者

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