承
『承認をめぐる政治』
しょうにんをめぐるせいじ
チャールズ・テイラー·現代
多文化主義の哲学的基礎として「承認」の政治的重要性を論じたテイラーの論文集
政治哲学
この著作について
カナダの哲学者チャールズ・テイラーが一九九二年にプリンストン高等研究所で行った講演をもとに、ハーバーマスら他の論者の応答を収めて刊行された政治哲学の論集。
【内容】
中心論文では、近代以前の「名誉」社会から近代の「尊厳」社会への移行のなかで、自分の真正なアイデンティティが他者に承認されることが人間にとって決定的な問題となった、という歴史的分析から始まる。ルソーの「一般意志」、ヘルダーの固有の声、ヘーゲルの主人と奴隷の承認の弁証法が辿られたうえで、多文化主義の二つの典型、「尊厳のリベラリズム」と「差異の政治」が整理される。前者は普遍的人権を優先し、後者は集団としての固有性の承認を要求する。テイラーはこの二つを単純に一方に還元するのではなく、「同等の配慮を払いつつ差異を尊重する」立場を模索する。巻末にはハーバーマス、スーザン・ウルフ、スティーブン・ロックフェラーらの応答が収められる。
【影響と意義】
多文化主義論争の中心文献の一つとなり、ホネットの承認論、キムリッカの自由主義的多文化主義、さらには先住民・マイノリティ権利の制度設計をめぐる議論に広範な影響を与えた。
【なぜ今読むか】
アイデンティティと包摂、普遍的権利と文化的差異のバランスは、移民政策や性的マイノリティの権利など、現代政治の中心論点に直結する。冷静かつ深みのある議論の組み立て方の実例としても役に立つ。