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近

『近代科学の誕生』

きんだいかがくのたんじょう

ハーバート・バターフィールド·現代

科学革命を世界観の転換として描いたケンブリッジ歴史学派の古典

歴史科学

この著作について

ケンブリッジ大学のレジウス教授であったハーバート・バターフィールド(1900〜1979)が1949年に刊行した『The Origins of Modern Science 1300-1800』の邦訳。科学革命研究の出発点となった一冊である。

【内容】

中世の自然学からニュートン総合に至る五百年の科学史を、個別の発見の積み重ねではなく「世界観の根本的転換」として描き出す。コペルニクス、ケプラー、ガリレオ、デカルト、ニュートンらの仕事を、当時の宇宙論・神学・形而上学的前提と切り離さずに位置づけ、化学革命や生物学の成立、産業革命との連関までを射程に収める。「科学革命はキリスト教世界の興隆とローマ帝国の崩壊を凌ぐ重要性を持つ」という有名な主張で、科学史の自律的意義を強く打ち出した。

【影響と意義】

本書はトーマス・クーン『科学革命の構造』(1962年)に直接の影響を与え、二十世紀後半の科学史・科学哲学の方向を決定づけた。科学を「発見の積み重ね」ではなく「思考様式の転換」として捉える見方は、科学史教育の標準的枠組みとなった。

【なぜ今読むか】

AI・バイオテクノロジーが世界観を再び書き換えつつある現在、過去の世界観転換がどう起きたかを学ぶことは、現代を歴史的に位置づける訓練となる。

さらに深く

【内容のあらまし】

もとは1948年にケンブリッジの科学史委員会のために行われた講義だ。序論でバターフィールドは、戦略的な転換の筋道を探すと予告する。科学革命はキリスト教の興隆以来のあらゆる出来事を凌ぎ、ルネサンスと宗教改革を中世キリスト教世界の内部の移動に格下げする、という一文もこの序論にある。

全12章は運動の問題から始まる。第1章で著者は、天体と地上の物理学の変化は、まず新しい観察からではなく、同じデータの束を新しい関係の中に置き直す頭の中の置き換え、いわば別の思考の帽子をかぶることから生じたと言う。アリストテレスの説では、物体は動かし手が接して動きを与え続けている間しか動かない。14世紀パリのビュリダンらは、投げられた物体を前へ運ぶのは、それが獲得したインペトゥス(勢い)だと考えた。少しのちのオレームは、この説に立てば、神が宇宙を時計のように動かし始めて放っておいたのかもしれないとまで言った。

第2章は、コペルニクスを新しい時代を開くより古い時代を閉じた人として描く。第3章によれば、ヴェサリウスは、固く見える中隔を血が通り抜けるのは神の力を示すと述べつつ、ガレノスの中隔説に最初に疑いを向けた人でもあった。ハーヴィは、心臓が1時間に送り出す血液が人の体重を上回ることを見出し、血液は体を絶えず巡っているほかないと論じる。第4章で著者は、1572年の新星はコペルニクスの説の公刊以上にヨーロッパの思想を揺さぶった、というある科学史家の評に同意する。古い体系の命運を決める材料の最後の一つは、1609年にガリレオが自作した望遠鏡だった。

第5章によれば、ガリレオがピサの斜塔から重さの違う球を落としたという逸話は、見物したはずの群衆の誰も証言しておらず、ガリレオ自身の著作にも裏づけがない。むしろ1612年にはアリストテレス派のコレシオが、塔の頂上から落とすと大きい方が速く落ちたと書いていた。第6章は『方法序説』の歴史的な意義を、哲学の箇所よりも自伝としての面に見る。第8章は、ニュートンのリンゴの話にも象徴としての真実はあるとし、1687年の『プリンキピア』で世に出た体系には、デカルトの渦動説が成り立たないことを示す狙いもあったと説く。

第9章では、科学を流行の婦人たちにも小説並みに楽しく読ませようとしたフォントネルら、科学者よりも文人たちが、科学革命の成果を急ぎ足で新しい世界観へ移していく。第10章は、日本に伝わればその地の伝統を、西洋の伝統と同じように溶かしてしまう文明が、こうして生まれたと論じる。化学では科学革命が遅れて起きた事情を探る第11章、進歩と進化の観念をたどる第12章が続く。

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