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『ニヒリズム』
西谷啓治·現代
ニヒリズムを徹底し空の立場へ抜ける戦後京都学派の主著
哲学京都学派宗教
この著作について
京都学派第二世代の中心人物・西谷啓治が一九四九年に刊行した、戦後日本の思想状況に深く食い込む代表作。ニーチェ以降の西洋ニヒリズムを正面から受け止め、それを徹底することで「空」の立場へ突破する道を探究した試みである。
【内容】
本書は二部構成をとる。前半でロシア(ドストエフスキー、ニヒリスト運動)からドイツ(シュティルナー、ニーチェ、ハイデガー)に至る近代ヨーロッパのニヒリズム思想史を辿り、その内的必然性を浮かび上がらせる。後半では、ニヒリズムを単に克服すべき病とみなすのではなく、自己と世界の根底に開ける深淵として徹底的に引き受け、そこから禅仏教の「無」と「空」の地平へと出る道筋を提示する。西田幾多郎《にしだきたろう》の絶対無《ぜったいむ》を受け継ぎながら、宗教的経験と歴史的現実の両面で応える哲学を志した著作である。
【影響と意義】
敗戦直後の日本において、虚無の経験を西洋思想史と東洋的「空」の双方から問い直した点で画期的だった。後年の主著『宗教とは何か』への思想的助走をなし、京都学派の戦後展開と日米欧の比較宗教哲学に大きな足跡を残している。
【なぜ今読むか】
意味の喪失や虚無感が広く語られる現代において、虚無を浅く慰めるのではなく徹底的に通過することの倫理を説く本書は、宗教と哲学の境界に立つ者にとって今なお手応えの深い古典である。
著者
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