歴
『歴史序説』
れきしじょせつ
イブン=ハルドゥーン·中世
社会科学の先駆とされるイスラーム歴史哲学の金字塔
歴史哲学
この著作について
14世紀北アフリカの歴史家・法官イブン=ハルドゥーンが世界史叙述『省察すべき実例の書』の冒頭に置いた、独立した一巻相当の方法論序文。1377年に草稿が完成した。歴史叙述の前提として社会の仕組み自体を分析する、社会科学誕生の一つの起源とされる著作である。
【内容】
全6部。砂漠の遊牧民と都市定住民の生活様式を対比し、両者を結ぶ動力として「アサビーヤ(集団的連帯心)」概念を立てる。強固な連帯で結ばれた遊牧集団が都市を征服して王朝を建て、代替わりを重ねるうちに奢侈に溺れて連帯を失い、次の遊牧集団に取って代わられる、という王朝興亡の周期論が中心思想である。あわせて地理・気候・経済・労働・都市の形成・科学と工芸・言語と文芸まで、当時のイスラーム世界を丸ごと視野に収める百科全書的な記述を備える。
【影響と意義】
19世紀ヨーロッパで再発見されて以降、アラブ思想史・社会学史・歴史哲学で最も頻繁に参照されるイスラーム古典の一つとなった。トインビーはこの書を同種の著作の中で最大のものと讃え、哲学者・人類学者のアーネスト・ゲルナーはイブン=ハルドゥーンによる政府の定義を政治哲学史上最良のものとみなした。
【なぜ今読むか】
「集団の熱量が社会を動かす」という洞察は、ポピュリズム・国家崩壊・SNS上の集団心理にそのまま響く。非西洋発の社会理論の厚みを体感できる。
著者
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