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人生の意味の心理学

じんせいの いみの しんりがく

アドラー·近代

アドラーが劣等感・優越追求・共同体感覚を体系的に論じた主著

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心理学

この著作について

個人心理学(アドラー心理学)の創始者アルフレッド・アドラーが1931年に公刊した、自らの理論を一般読者向けに体系化した主著。

【内容】

劣等感と、その補償としての優越への追求が人間行動の根本的な動機である、という基本命題からスタートする。劣等感そのものは誰にでもあるもので、それが健全な努力を生むか病的な「劣等コンプレックス」になるかは、人生の課題(仕事・交友・愛)にどう向き合うかで決まる。解決の鍵となるのが「共同体感覚」、すなわち自分が他者や社会の役に立っているという感覚の発達である。幼児期の記憶・家族布置・学校経験がどう性格を形作るかが、豊富な臨床例とともに語られる。

【影響と意義】

フロイト精神分析ユングの分析心理学と並ぶウィーン第三の深層心理学として、カウンセリング・教育心理学・自己啓発に広く影響した。日本では2010年代の嫌われる勇気のヒットをきっかけに再評価が進んでいる。

【なぜ今読むか】

「劣等感は誰にでもある。問題はそれを言い訳にするかどうかだ」という洞察は、自己評価が厳しすぎて動けなくなる人に温かい示唆を与えてくれる。

さらに深く

【内容のあらまし】

本書はアドラーが渡米時の講演を整理し、自らの個人心理学を一般読者向けに体系化したものである。冒頭でアドラーは、人間は意味の世界に生きていると宣言する。同じ事実でも、それをどう意味づけるかで人生は変わる。あの出来事は失敗だ、自分はだめだという解釈は、事実そのものではなく、本人が選び取った意味づけにすぎない。

続く章で中心概念が次々に提示される。劣等感はすべての人間が持つ普遍的な経験で、それを補おうとする努力こそが文明と個人の成長の原動力である。問題は劣等感そのものではなく、それを言い訳にして人生の課題から逃げてしまう「劣等コンプレックス」である。人生の課題は三つに整理される。仕事の課題、交友の課題、愛の課題である。これらすべてが、他者と協力し合うことなしには解決できないため、人間はそもそも社会的な生き物として位置づけられる。

中盤では「ライフスタイル」という概念が説明される。子どもは四、五歳までに、両親の態度、きょうだい関係、自分の身体の特徴、家庭の雰囲気を素材に、世界と自分についての一貫した物語を編み上げる。長子・末子・中間子・一人っ子それぞれに典型的なパターンがあり、初期記憶を分析すると本人がいまも採用している人生の方針が浮かび上がる。アドラーはこの分析を、患者や生徒のエピソードを多用して具体的に展開していく。

後半の中心は「共同体感覚」である。自分が他者の役に立っており、共同体のなかで意味のある場所を持っているという感覚が、健康な人生の指標となる。神経症や非行や犯罪は、共同体感覚の発達不全として理解される。学校教育のあり方、結婚の意味、職業選択の指針、子どもの教育などが、共同体感覚の育成という観点から論じられ、最終章ではどのような労働も、それが他者の福祉に貢献する限り価値があるという結論で締めくくられる。劣等感に苦しみ、自分が無能だと感じている読者に対し、アドラーはどこまでも「勇気」を取り戻すよう静かに促す。

著者

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